SATOMACHI/さとまち

“さと”と“まち”を和えるライフスタイル

スポーツドクターから学ぶ健康づくり。大切なのは予防と科学的根拠。

サッカーのピッチに、選手が倒れる。審判が笛を鳴らし、試合を止めると同時に、ベンチから大きなバックを抱えたドクターがダッシュで選手に駆け寄る。ドクターからベンチに、大きな〇(丸)印が送られる。こうしたシーン、見たことありませんか?
今回は、順天堂大学スポーツ医学研究科の准教授であり、サッカーU-17日本女子代表 前チームドクターやJFAメディカルリサーチグループのメンバーを務める長尾雅史氏から、「からだマネジメント」をテーマに、データを交えて健康づくりやからだづくりのポイントについてのお話を伺いました。さらに学びを深めるため、“比治山からだマネジメントプログラムの開発” というお題で、グループワークショップを行いました。比治山公園の持つポテンシャルを健康づくりの視点で掘り下げ、参加者のみなさんからは様々なユニークなアイデアを発表してもらいました。

会場は、サッカー日本代表のオフィシャルパートナーであるKIRINの広島支店をご提供いただきました。実はサッカー日本代表とKIRINとの関係は古く、1978年と40年以上前から始まっており、サッカーが今のように日本でメジャースポーツになる前からKIRINが支えてきた長い歴史があるのだそうです。最初にこうした会社紹介を聞き、さらにスタジアムに実際に掲げられる応援バナーを特別に本社から取り寄せて飾るといった粋な演出の中、長尾氏の話へと移っていきました。

スポーツドクターという仕事

冒頭で挙げた、ドクターが選手に駆け寄った後、すぐに選手の状況を見て、プレーできる・できないを判断する場面。この判断が30秒遅れたり、後でその選手が交代になると監督に怒られるという厳しい現場に立ち会いながら、選手の健康を支えているのがスポーツドクターなのだそうです。

スポーツドクターは、Jリーグのチームを例にした場合、メディカルチームの一員として、コンディショニングを担当するフィジカルコーチらと連携して、選手のケガの治療やコンディションづくりにあたります。こうしたドクターは、チームドクターとして各チームと個別契約し、定期的にチームを訪問し選手の状態をチェックし、治療方針に問題ないかを確認します。

このチームドクターは、サッカーと野球では関わり方が異なるらしく、野球におけるチームドクターは、どちらかというと病院にいることが多く、選手は怪我や病気の時に受診することが多いようです。それに対してJリーグでは、チームドクターはチームと共に行動し、日常の些細な事から怪我・病気に至るまで関わるスタイルです。この仕組みのメリットは、怪我や病気の「治療」だけでなく、「予防」にも関わることができる点です。

プロの選手は、この他にも薬やサプリメントなど、様々な人から様々な情報がもたらされ、選手個人が正しい情報を自分で選択するというのはかなり難しい状況になっています。
こうした点は、私たち一般の人も同じ話で、信頼できるホームドクター(かかりつけ医)が大切だと痛感しました。

なにより予防が大切。

ドクターをはじめとしたメディカルチームに求められているのは、ケガへの適切な治療方針もですが、なんと言ってもケガや病気の「予防」だそうです。ケガや病気をすると、数か月のロスが出て、チームの成績、選手の実績に直結するので、なるべく長い時間、いい状態でプレーすることを目的にメディカルチームも活動しています。

では、ケガや病気の予防として、実際にはプロ選手はどんなことに取り組んでいるのか。
実は特別なことではなく、日々のケア・管理を徹底してやっているそうです。

  • トレーニングをなるべく科学的根拠に基づいて実施する。
  • 食事はなるべく科学的根拠に基づいたバランスのいい食事をとる。
  • 規則正しく生活する。
  • 十分な睡眠をとる。

こうした当たり前に思えることは、実は当たり前ではないようで、長尾氏によれば一般的に数多く紹介されているケガを予防するためのトレーニング方法は、ほとんどの場合予防法として科学的根拠が十分でないのだそうです。日本には、スポーツによるケガに関するデータ、それも全チーム・全国民といったような横断的なデータがなく、科学的根拠に基づく実践が弱い状況になっているとの懸念があるそうです。

また、予防を考えるうえで特に重要だと長尾氏が強調するのが、「疫学」(健康被害を食い止める方法として、疾病の起きている地域や人の属性などの情報から要因を見つける学問)です。この疫学を充実させるためには、データをスポーツや国を超えて協力して蓄積していくことが重要であり、こうした科学的根拠が必要だと言います。

骨折予防に、外に出よう。

日本人全体で生活習慣や栄養に関する問題を見ると、①睡眠不足、②ビタミンD・カルシウムの摂取不足、③運動不足、④やせすぎ、と骨粗しょう症と関連がある項目が多いのだそうです。実は、日本人女性のうち、80歳以上の60%の女性が骨粗しょう症といったデータがあり、普通に生きていれば、半分以上の人が骨粗しょう症になるとのこと。

これは日常診療の中でも実感するところで、ご高齢の方で、腰痛で病院を受診した方のうち、実は骨折をしている「いつのまにか骨折」のケースが多いのだと言います。数値にも表れており、症状があって病院を受診するのは30%程度なのだそうです。これは残りの3分の2の人は骨折しているのに気づいていないという衝撃的な数字でです。

この数字を放っておけないのは、背骨や股関節が折れると、寝たきりになる可能性が高いからです。

一方で、骨粗しょう症は予防できるとのことです。運動することで、骨の密度や質も上げられるし、ビタミンDを摂取することで食べ物からのカルシウム吸収を上げられます。そして、このビタミンD摂取は、紫外線に当たるのがよいのだそうです。

「だから、外に出よう」

このシンプルな結論は、「外に出て体を動かす」という当たり前のことが、やはり大切なんだと再確認させてくれるものでした。

グループワークショップ「お題“比治山からだマネジメントプログラムの開発” 」

さて、後半は、ワークショップです。
長尾氏の話を受けて、グループで比治山公園をつかった健康づくり・体づくりのプログラムを考え、発表しました。

1組目:「山の神養成講座」

比治山公園の地形を生かして、運動不足の人が坂道を走るプログラムを考案しました。インストラクターは、箱根駅伝の歴代の「山の神」に来てもらい、坂道の走り方を教えてもらい、さらには新たな「山の神」を養成しようという野心的な内容です。

2組目:「近所で大冒険」

比治山には、木がたくさんあり、樹種が多い。親子を対象にして、落ち葉の上を歩くだけでも、音がするし、いろんな葉っぱを見つける楽しみがある。それはまさに探検で、夢中になって探し回っているといつの間にか結構歩いていた、となってほしい。そんな願いのこもったプログラムです。

3組目:「JK ワンチャン あるかも 比治山」

ターゲットを女子高生を対象にして、普段来ない人に来てもらおうというコンセプトです。女子高生が興味を持ちそうなインスタ映えポイントを、こちらで準備するのではなく、女子高生自身に見つけてもらったり、作ってもらい、巻き込んでいこうというもの。美白傾向にある中、ドクターに監修してもらい、若いうちから日に当たってもらい骨折予防に取り組もうというプログラムです。

4組目:「比治山アートロゲイニング」

時期は、春から秋の休日。普通のロゲイニングは写真を撮ってまわりますが、比治山のいろんなポイントを絵を描きながらまわります。現代美術館やまんが図書館があることから、生物や植物について学べたり、絵の描き方を学べたりした上で、一日中走っては描く。そして汗をかくといったプログラムです。

5組目:「比治山GO!!」

比治山の自然を生かして、比治山公園をオリエンテーリングのように、歩いて回ってポイントがもらえるようにします。そのポイントは、スマホのアプリと連動していて、子どもたちはポイントをゲットし、たまったポイントに応じて、キャラクターなどがもらえるようにします。かなり、あのゲームを意識しています。

6組目:「比治山トレジャーランニング(トレラン)」

比治山全体を宝探しのフィールドに見立てて、体をつかって様々なミッションを達成していきます。楽しさの要素を入れながら体を動かしていく。それは、トレジャーハンティングならぬ、トレジャーランニング(略して、トレラン)です。

7組目:「大人も子どももWoodOne」

比治山の木を活かして、いろんな遊具を作りたい。また木で基地のような新しい場所をつくりたい。こうした作業を親子一緒にすることで、心にも、体にも良いプログラムに。木を通じて、大人も子どもも一つになれる。だからWoodOneです。(笑)

さてこの中で、栄えある「長尾賞」に輝いたのは・・・

 

 

 

・・・・・・ドゥルルルルルル(ドラムロール)・・・・・・・

 

 

 

「場を作るところから当事者として、あるいは場をSNSを使って共有する発信者として巻き込むなど、拡がりのある案がいくつも出ていたように感じました」と全体の感想を話した後、少し悩んでから「3組目の女子高校生を巻き込むアイデア。普段ここに来ない人を呼ぶというコンセプトが気に入りました。それと、仕事柄、女子高生とのコミュニケーションがいかに難しいかを痛感しているので、女子高生とのコミュニケーションを頑張ってほしいとの期待をこめて」と選ばれました。

商品として、KIRINさんより、ドリンク詰め合わせをいただきました。

あえる比治山 vol.004 企画概要

主 催:広島市・SATOMACHI
事務局: 株式会社和大地
協 力:キリンビール株式会社広島支店
日 程:2019年6月24日月曜日
時 間:open18:30- / start19:00- 懇親会21:00-
会 場:キリン広島事務所
住 所:広島県広島市中区八丁堀16-11 スタートラム広島12F
案 内:https://satomachi.jp/blog/2019/05/29/aeru-hijiyama004/

文/岡本 泰志

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