SATOMACHI/さとまち

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さわって、ずらして、ととのえて。ーー神主・内田久紀さんと考える、“ひらかれた神社”のこれから| あえるひろしま#07イベントレポート

OVERVIEW「空鞘」を読んでもらう

2025年5月21日、「あえるひろしま#07」は、広島市中区・空鞘稲生神社の神主 内田久紀さんを迎えて開催されました。テーマは、「しきたりを、すこしずらす。」わずか1週間前の告知にもかかわらず、当日は37名の参加者が集まり、空鞘稲生神社の取り組みに対する高い関心と期待が感じられました。

内田さんは、神社と寺の違いへの認識不足、神社への関心の低さ、地域とのつながりの希薄さといった課題に対し、「それって本当にそうだろうか?」と問いを立て、現状を見つめ直すことから活動を始めてきました。昼は神主、夜は飲食店で働いた経験を活かし、内田さんが行ってきた取り組みはどれも“神社の敷居を下げる”ことを目指したものです。

野菜市や縁日、ヨガ教室、日本酒づくり、SNS発信……ひとつひとつの取り組みは、「神社ってこうでなきゃ」という思い込みに、優しく“ずらし”をかける実践でもあります。

コロナ禍では、誰よりも早く秋祭りを実施。感染対策に配慮しながらも、「地域に必要とされる存在でありたい」という姿勢が、神社の新しい認識へとつながっていきました。

  • 開催日・時間:2025年5月21日(水) 18:30–22:00(交流会含む)
  • 開催場所:ポートクラウド(広島県広島市中区基町5-44 9F)
  • 主催:nextひろしま、SATOMACHI(株式会社和大地)
  • ゲスト:内田 久紀(空鞘稲生神社 禰宜)
  • 参加者数:37名(教育関係、大学生、フリーランス、十日市界隈の方、空鞘稲生神社ファンなど)
  • イベントの目的:
    他のエリアとはちょっと違った活動をされている空鞘稲生神社さんの話を伺い、「神社ってもっと自由でいいのかも」と感じられる時間を過ごし、「お参りの場」だけでなく「関わる場」へと自分ごとにつながるように。

「神社って、もっと自由でいいと思うんです」

空鞘稲生神社では、以下のような実践を通して“ひらかれた神社”を体現しています。

  • 春・夏の縁日、秋祭り、七夕など、年中行事に加えて人が集う「催しの場」としての境内利用
  • 毎月開催の「おついたち参り」「ファーマーズマーケット」
  • 社務所を活用したヨガ、ピラティス、ベビーマッサージ、キッズヨガ、いのちのはなし などの定期プログラム
  • 境内スペースを地域イベントにも開放し、主催者との協働を進める
  • SNSでの発信(Instagram/X/Facebook)、口コミやメディアを通じた広報
  • ロゴの導入など、視覚からのアプローチによる親しみやすさの創出

さらに、神主・農家・杜氏の若手3名による日本酒づくりプロジェクト「一味神水」では、田植えから醸造、奉納までを伝統行事とともに行い、異業種連携によるものづくりにも挑戦しています。

内田さんの言葉は、参加者のなかにあった“神社はこうあるべき”という固定観念に、そっと揺らぎを与えました。

・神社はサウナのように“ととのう”場所になれるかもしれないこと
・地域社会との関係が薄れるなかで、どう新たな接点をつくるか
・“どう関わるか”が大事だと思うこと

神主としての在り方はひとつではない。だからこそ、神社がまちの余白として「触れていい場」になればいい──そんな思いが共有されていきました。

まるで神社ベンチャーを考えるようなSession

後半は、「神社に“自分が”持ちこむとしたら?」をテーマにしたグループセッションを実施。話題に上がったのは、

  • アニメや地域の記憶の中での神社の姿(子どもたちのたまり場、公園的役割)
  • 静かな交流:読書会やものづくり、世代を越えた語らいの場としての神社
  • 動的な交流:ライブや賑わいのある季節イベントなど
  • 神社とお寺がタッグを組んだらどうなるか?という発想
  • 神社を拠点とした収益事業やビジネス(果樹園、幼稚園、イベント、社務所の利活用など)

神社がもつ“余白”の活かし方が、多様な視点から語られ、「神社ってもっと自由でいいのかもしれない」という実感が会場に広がっていきました。

「さわって、ずらして、ととのえて。」

神社は、まちの中で新しい役割を帯びていく。内田さんの言葉と実践は、そんな未来の風景を指し示してくれていました。

まちの中に残された神社という余白に、どんな関わり方があるのか。どこまで“触れて”よいのか。
そんな問いに対して、「やってもいいんだ」と思える感覚を持ち帰った参加者が多く見られました。

参加者の中には、「神社に興味を持ったのは初めてかもしれない」「関わってもいいんだと思えた」という声も。

最後は、空鞘稲生神社・合同会社安田農産・旭鳳酒造の三者で手がけた日本酒「一味神水」を片手に、ゆるやかな交流と語らいで夜は穏やかに閉じていきました。

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