SATOMACHI/さとまち

街中の自然を味わう仕掛けで、来を創る。

花咲く陽気な公園で、思い思いに春にふれあう ーふれる比治山~サクラ茶会~

初夏を思わせる陽気。しかし、周りを見渡せば、まだまだ桜も残る4月上旬。朝7時には、ヒヨドリの鳴き声が聞こえていましたが、時間が経ち人が増えるにつれて、子どもたちの遊ぶ声が大きくなり、やがては「トンカン、トンカン」と子どもたちがASOBIBA(あそびば)でトンカチやクギをつかって工作する音に変わっていき、この日、一日中公園のBGMとして響き渡りました。

そんなBGMと桜や木漏れ日に囲まれながら、広島の伝統文化の一つ茶道・上田宗箇流の茶会を中心に、外という自由な空間で、思い思いに春に触れ、そのひとときを楽しみました。

本物にふれる。サクラ茶会|Main Session

dirctor:一般社団法人広島青年会議所 上田宗箇流 直心会のみなさん

ビシッと決まった、着物や作務衣。これで「茶会」と聞くと、参加するこちらも服装や作法をきちんとしなくてはと緊張してしまいますが、今回のお茶会は、外で、服装も自由で、子どもでも参加できる、とてもオープンな形でした。誰もが楽しめるものでありながら、そこにはもてなす側のちょっとした所作や伝統が生み出す凛とした雰囲気もあり、こちらの心をすっと引き締めてくれます。

初めてで、作法も何もわからなくても、お茶の飲み方などちゃんと説明をしてもらえます。丁寧なひとつひとつの説明を聞いていると、自分がこの場でどうすればいいのかわかってきます。

・今回は、どんなお菓子、どんなお茶、どんな器にしたのか。
・桜をテーマに、「見立て」などどんな工夫をして、この場を設えてみたのか。

これらの説明の一つ一つに、参加してお茶を飲んでくれる相手のことを思い浮かべながら選んだことがはっきりを伝わってきます。こうしたおもてなしの心に触れると、年齢に関係なく、自然と感謝をしながら、大切に味わおうと思えてくるから不思議でしたし、伝統文化の持つ力なのかと実感しました。

変化にふれる。花炭づくり|クラフトSession

director:広島環境サポーターネットワーク

「炭=木または竹」といったイメージが強いですが、キャンプでは火口に布を炭にしたチャークロス(炭布)が使われるなど、色々なものが炭にできます。「炭ってなんだ?」と考えたり、調べてみるのもいいですが、よくわかないけどやってみるのも楽しいです。公園に落ちている身近な植物を使って作る花炭は、「こんなものも炭になる」のだと頭ではなく体で学べます。さらに、火にかける前は色とりどりだった植物も、炭になるとすべて真っ黒になります。こうした火による変化を味わえるのが、花炭の楽しさかもしれません。
実は、花炭は茶道とも縁が深く、「飾り炭」と呼ばれ、見て楽しむ炭としてお茶の席で親しまれているのだそうです。

自然にふれる。春の自然探し|さんぽSession

午後からのサクラ茶会より一足早く、午前中に始まった春の自然探し。今回は「満開の木々」を観察しました。

director:上田康二さん

花びらが散り、葉桜になりつつある木々の側で、「もみじが満開ですねー」と言い出すdirectorの上田さん。
まんじゅうにもなっていて、広島県の木であり花である「もみじ」。言われてみれば、秋の紅葉は意識したことはあっても、満開は意識したことはなかったことに気づきます。赤く色づいているのは、花なのだそうです。

「どんぐりになる、椎(シイ)の木も満開ですね。あの先にぶら下がっているように見えるのは、花なんですよ」と教えてくれます。常緑樹は、春が葉の入れ替わり時期で、花が咲き、葉が生え変わり、萌えているのだそうです。

「桜は、虫から守るために、アリに協力してもらっています。そのために、アリの好きな蜜をためるところを持っています」など、植物が動物や昆虫を利用して自分の体を守っていることなど、歩きながら次々と知らないことを教えてもらいました。

想いにふれる。サクラの下で想ふ~都市と自然~

director:平尾順平(ひろしまジン大学:左)、大田真奈(ひろしまジン大学:中) キムラミチタ(ひろしまジン大学:右)

桜の木の下で、もの想いにふける。一人でそんな時間を過ごすのもいいですが、みんなで過ごすのも、また楽しいです。「まちをめぐる。まちとつながる」をキーワードに、まちのことを考える「授業」という名の参加型ワークショップを開催しました。directorのひろしまジン大学のみなさんは、コロナの影響でこうした対面での授業は約2年ぶり。そんなことは感じさせない、穏やかな進行で、参加しているみなさんが、空の下でおしゃべりをすることを楽しんでいる姿が印象的でした。

この日の会場である比治山公園を中心に、『しぜんとひろしま』など、都市の中にある身近な自然に触れ、活かす機会づくりに取り組んでいるSATOMACHIの和田から「都市と自然」について考えていることなどが投げかけられました。
その後は、参加者全員で「自分のお気に入りの場所」情報を交換をし合い、その情報は、桜に見立てたピンクの付箋に書き出して、そのおすすめポイントを発表しながら、バナーに貼って共有しました。

自由にふれる。ASOBIBA

director:寺本光児(みやうち冒険あそび場の会)

「自分の責任で自由に遊ぶ」がモットーのあそびばは、この日も大盛況。ノコギリやトンカチなど自分で道具を選び、自分で木を切ったり、釘を使って、自由に自分の思うものを作っていきます。
「ギコギコギコギコ」
「トントントントン」
「カンカンカンカン」
子どもたちのものづくりへの集中力はすさまじく、この日一日、この音が鳴り止むことはありませんでした。

物語にふれる。春の本とのささやかな出会い|ブックストアSession

ブックキュレーター:今田順(@junimajun)

ブックキュレーターの今田さんが選んだ、春や桜にまつわる本。そういった本との一期一会を受けとめるような、優しい木陰の空間がありました。
自分と本との心地よい距離感。不思議と誰もが自分のそれを知っているようで、本と過ごす空間が生まれていきます。

今田さんによると、本のある空間は、なぜか落ち着き、自然と会話が生まれたのだそうです。どんな仕事をしているのか、どんな本を読んで、どんな印象を持ったのか。そうした短いやりとりの中から、今田さんは「もしかしたら、この人にはあの本はどうだろう」と思いをめぐらします。
そんな本を通じて生まれる見えないやりとりも、この空間を気持ちのよいものにしていたのかもしれません。

好奇心にふれる。SATOMACHIストア

店主:田尻知恵(SATOMACHI)

里(SATO)とまち(MACHI)をつなぎ、そのめぐみを暮らしの中に取り入れ豊かにするライフスタイルを提案するSATOMACHI。そのセレクトショップであるSTOREでは、伝えたいことにあふれている店主が出迎えてくれました。そこに置いてある商品が、「どこで」「誰が作ったか」では飽き足らず、その商品にまつわるヒト・モノ・コトのストーリーを、湧き出てくる愛情とともに語ってくれました。
この日提供した桜湯についても、塩桜をつくられた庄原のおばあちゃんの顔を思い浮かべながら、収穫時期や作業の方法などの手間や、桜湯以外においしくいただく方法など、余すことなく伝えてくれました。

外という場所の力に誘われて

寒さとコロナ禍で家の中で過ごすことが多かった、この冬。まだコロナが収まったわけでないですが、暖かさとともに、外に出たい気持ちでいっぱいの方も多かったようです。
「家では、子どもがスマホで動画を見てばかりで心配」「外で遊んでくれるかしら」といった声もよく耳にする中、参加者一人ひとりがゆっくりと外時間を楽しんでいる姿が見られたのが印象的でした。

「外にいるだけで気持ちいい」

そんなシンプルな答えがみんなをこの場に向かわせて、気持ちが整う爽快感と、気持ちを開く開放感とを味わわせてくれたのだと思います。

サクラ茶会の中で、「茶会も、明治時代くらいから畳の上ではなく椅子に座ったやり方も出てきました。それは生活様式に合わせた楽しみ方なのです。」といった説明がありました。それを聞きながら、今の時代に合わせた楽しみ方を見つけていくことが大事なのだと気づきました。

それは、今の自分たちに合ったささやかな楽しみ方を、気持ちよく試行錯誤することなのだと思います。そして、青空の下、いろいろなヒト・モノ・コトに触れ合えたこの茶会は、そんな楽しみ方を探すぴったりの場だったのかもしれません。

【実施概要】

タイトル|ふれる比治山〜サクラ茶会〜

主催|一般社団法人広島青年会議所 上田宗箇流 直心会/SATOMACHI

後援|広島市

協賛|株式会社御菓子所 高木/浄土真宗本願寺派 専光寺/大旗連合建築設計株式会社/株式会社第一ビルサービス/中吉エンジニアリング株式会社/株式会社UNEMOTO/とうかさん圓隆寺/有限会社綾部不動産/株式会社フージャースコーポレーション/パレコーポレーション株式会社

協力|今田順/庭能花園/広島環境サポーターネットワーク/広島自然観察会/NPO法人ひろしまジン大学/みやうち冒険あそび場の会

会場|比治山公園 御便殿広場(まんが図書館奥)

日程|2022年4月9日(土)10:00~16:00

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