新型コロナウイルス対策に、熱中症対策。プールに入れない、短い夏休み。なにかと気になり、自粛やあきらめムードがつきまとう、いつもと違う今年の夏。でも、そういった中でも「暮らしを楽しむことはできるはず」と、ウィズコロナを踏まえて、通常のイベントよりも小規模のちょっと暮らしが豊かになるコトが展開できたらと考え、非日常のイベント体験ではなく日常の暮らし体験を楽しんでいただくライフスタイルプログラム「PARK SESSION」という新たな取組みを立ち上げました。
今回はそのテストケースとして、昨年「ぶらり比治山」で開催したセミの生態調査の経験を活かした「セミ生態調査2年目!比治山のセミ博士になろう!」を開催しました。もちろん、新型コロナウイルス対策のため、いろいろと工夫して、安心して楽しめる内容を心がけました。
事前のレクチャー動画で、頭も心も準備万端
お盆が過ぎても、まだまだ続く暑い日々。今日も暑いのかなと覚悟して外に出ると、少し涼しい空気が。秋の気配を少し感じながら、まだまだ元気なセミの声を聞き、楽しみにしていた2年目のセミ生態調査のプログラムを迎えました。集合場所は、まんが図書館前の広場。受付では、当日の朝に測ってもらった体温を書いてもらった体調チェックシートを提出してもらい、消毒液を用意したり、アメを準備するなど、コロナ対策や熱中症対策をしました。
セミとり網を握りしめ、鳴き声を頼りにセミを探しながら来る親子の姿。プログラム開始前から、すでにセミとりは始まっています。それもそのはず。参加者のみなさんは、事前に今回セミのことを教えてくれる「こんちゅう大好きおじさん」上田さんからのメッセージ&レクチャー動画を見て、セミとりのポイントや楽しみ方について予習済み。やる気マンマンです。
中には、作り方レシピを見て、家にあるもので簡単に作れる虫とり網をつくってきた子も。
上田さんのメッセージ&レクチャー動画・・・
How to 虫とり網づくり・・・レシピシートはこちら
成虫も抜け殻も。セミの見つけ方のコツ
プログラムが始まっても、みんな事前学習が済んでいるので、説明は最低限で本編へ。時短で、子どもたちの集中力がそがれることがなく、実際のプログラムに入っていけたと参加した親御さんからも好評でした。最初に、参加したお子さん一人ひとりにプレゼントされた材料を使って、昆虫観察ボトルをみんなで工作。身近な材料で、小さい子でも簡単に作れ、「早くセミをとってこの中に入れてみたい」とみんなのやる気もアップ。はやる気持ちを抑えることなく、見つけ方の練習へ。近くの木を見ながら、上田さんからどんなところにいるか、見つけ方のコツを教えてもらいます。動画で勉強できていたつもりでも、やはり実践はなかなか難しい。ただ、最初は見えなくても、言われたとおり、枝に沿って見てみたり、角度を変えて見てみると「あ、いた!」となります。そして、慣れてくると、「ココにも、ココにも、ココにもおる」と結構いることに気づきます。上田さんだけでなく、サポートしてくださる広島自然観察会の環境サポーターのみなさんも、押し付けることなくやさしくいろいろと教えてくださいます。さらに、セミの成虫だけでなく、抜け殻を探してみるのもおもしろいと教えてもらうと、今まで上を見上げていた頭を、体を低くしてじっと下の方を見つめます。すると、すぐに「抜け殻、あったー」と葉っぱの裏側にくっついていた抜け殻を取って、見せてくれる子も。見つけ方がわかったところで、今度はいよいよ自分たちでセミ取りへ。上田さんからは、「同じセミをたくさん捕まえるだけじゃ、おもしろくない。アブラゼミはすぐ取れるから、クマゼミ、ニイニイゼミ、ツクツクボウシ、ミンミンゼミ。今ごろ比治山で取れそうなセミ、全部コンプリートを目指そうや」と目標をもらって、公園内の木を見て回りながら、セミ取り開始しました。
しぜんと、あふれる、気持ちと会話
真剣で楽しい声が溢れます。鳴き声を頼りに探す子、教えてもらった木を横から見てポコッとしていているところを探そうとする子、とやり方は様々。
「おらんね。あ、おった」「いたいた。あっこあっこ」と見つけたことに興奮する声。「サッと取らんと、ゆっくり近づくだけだと、逃げられるよ」「セミが逃げそうな方向を想像して、網を出すのがコツよ」といった取り方を伝授する声。「どう?入った?入ってない?」「あ、一瞬とれたのに。ごめん失敗したみたい。ごめんね。」「やった?やったー」「やさしく、やさしく、つかむんよ。網の中におるから、大丈夫よ」と成功・失敗に一喜一憂する声。中には、「セミはとりたい。けど、セミを触りたくない。あんた、とって」と網の中のセミを弟にとってもらう、姉弟で役割分担する家族も。
そんな合間にも、取ったセミや抜け殻を上田さんに見せると、
「これは何ゼミじゃろうね?」
「オスかな?メスかな?」
「どんな鳴き方するんかな?」
「成虫はどんなじゃろ?」といろんな質問を投げかけられ、ますます興味が深まります。
「この木のシミは、セミが木の汁を吸った跡じゃね。たくさん跡があるから、セミはこの木が好きなんじゃね」などセミの暮らしについていろいろと教えてもらいました。こうしたさまざまな声や会話を交わしながら、大人がセミがとまっている場所を周りの子どもに教えたり、セミを網から出す時は先生が手助けしたりと、子どもも大人も一緒になってセミに夢中になりました。
目で、耳で、五感で探して、いつでもたのしむ。
セミをとり終えた後は、みんなで振り返り。セミをとりすぎて、虫かごの中が佃煮状態の子も。セミを観察ボトルに入れて、羽の色や体のつくりを観察。「クマゼミの羽は透明で、きれいじゃねぇ」
「ツクツクボウシの羽の模様は、桜の木みたいで、桜の木と同化して見つけるのが大変なんよ」
「アブラゼミは5年間くらい、土の中におるんよ」
「セミの目の数はいくつあると思う?正解は5つです」
と、上田さんの子どもたちからの質問への回答やその言葉を通じて、みんながどんどんセミ博士になっていきます。「なぜ、ミンミンゼミは茶色いのか?」という質問はさすがに上田さんでもわからず、「セミに聞かなきゃわからない」ことのことでしたが。さらに、全員が、セミを見つけられたし、抜け殻も見つけられたことが判明。「抜け殻があったところは、その近くにセミがおる可能性も高い。次は、みんな自分でセミをつかまえられそうじゃね。抜け殻があったところをマップにしておくといいね」と、激励&宿題を上田さんからもらいました。参加された方からは、
・初めてミンミンゼミを見れて、楽しかった
・子ども同士で盛り上がっていた。家に帰ってから思い出話で盛り上がった
・子どもと同じ目線でセミを観察できた
・暑い中、4歳の子どもとの参加で心配でしたが、適切な時間配分のプログラムのおかげで、飽きず、疲れすぎずに楽しむことができました。
といった感想をいただきました。
上田さんによれば、同じ場所でも2週間くらいでそこに生きている生き物は大きく入れ替わるらしいです。だから、近所を散歩しながら、目で探す、耳で探す、五感を使って探してみるだけで、いつも発見があり楽しいんだそうです。
そんな楽しみ方が広がり、セミ取りももっともっといろんな人にとって「イベントごと。特別なこと(非日常)」ではなく、いつでも好きな時に誰もが楽しめる「日常」になっていけばいいなと感じました。
残念ながら今回の企画に日程的に参加できなかった方も、動画をご覧いただきみなさんの自由な時間で比治山のセミの生態調査を楽しんでもらうこともできます!ぜひトライしてみてください。
企画概要
タイトル:セミ生態調査2年目!比治山のセミ博士になろう!|いきものSESSION
主催: 広島市(政策企画課)・SATOMACHI(市の業務受託者㈱和大地の運営チーム)
事務局: 株式会社和大地
協力: EPOちゅうごく、広島県自然観察指導員連絡会 (五十音順)
日程: 8月22日(土)
時間: 9:15集合 10:45終了予定 /追加開催 11:30集合 12:45終了予定
集合・解散場所: まんが図書館前広場 住所:広島市南区比治山公園1番4号
セミ採取場所: 比治山公園 御便殿広場、広島現代美術館付近の通路の樹木
案内:http://satomachi.jp/park-session-ikimono000/
PARK SESSION(パークセッション)とは
比治山公園で楽しむライフスタイルプログラム。ウィズコロナにおける、新たな取組です。通常のイベントよりも小規模のちょっと暮らしが豊かになるプログラムを、比治山公園全体を使って、定期的(月1〜2回ぐらい)に実施します。
イメージは、フィットネスジムとカルチャースクールを融合したような新たなライフスタイルプログラムで、比治山公園全体を使って、人と人、人と自然をつなぐ、まったく新しいコミュニティが生まれたらと考えています。