比治山が街中の里山(自然と共生できる場所)として今よりもさらに人々が楽しく活用できることを想う方々と、一緒に考えながら少しずつ比治山の整備に取組む、広島市とSATOMACHI(運営会社:和大地)が主催した「ととのえる比治山vol.5~あかるい新年、柴刈りで~」。2019年7月の「ととのえる比治山Vol.3~ささのは、かりかり~」に続く3回目のみんなで柴刈り。今回は、春が来る前に展望スポットを整え良い景色を残そうと、午前中にムーアの広場、お昼ごはんを挟んで、午後に富士見台展望台と陸軍墓地の柴刈りをしました。
また、今回は一般参加に加えて、ボランティア活動や企業のCSR活動などの一環で、柴刈りなどを行っていただける企業や団体等を募集しておりました。参加いただいた団体のみなさんからは「草木で見えなかった景色が、みんなで力を合わせて柴刈りすることできれいに見えたところに達成感を感じた」などとコメントをいただきました。
参加団体一覧(五十音順) 株式会社オオケン、カルビー株式会社、株式会社フジタ、マツダ株式会社
花見でにぎわう前に。ムーアの広場前
朝でも日差しがあたたかいムーアの広場。春にしっかりと京橋川や平和大通りなどここからの眺めが楽しめるように、この広場前を整備しました。整備する前にこの「ムーアの広場」について広島市現代美術館の林さんに教えてもらいました。この広場の中央に展示されている彫刻は、20世紀のイギリスを代表する芸術家ヘンリー・ムーアの作品で、収蔵・展示数が1700にものぼる同美術館の中でもっと大きなものなのだそうです。このムーアの広場の延長線上には原爆の爆心地や原爆ドームがあるなど、この場所に込められた思いを学びました。そのあとは安全講習です。今回は、チェーンソーや刈払機などの動力のある刃物は参加者は使わず、手ノコが中心でしたが、動力が無くても扱うのは刃物。5つの班に分かれて森の整備リーダーからその扱い方など、安全管理で注意すべき点などを学びました。さらに作業に先立ち、リーダーたちによる下草刈りの時に力を発揮する刈払機のデモンストレーションが行われました。ムーアの広場前の斜面に刈払機を持って降りると、人の身長くらいの高さのある笹や草木の茂みに隠れて、肩より上しか見えないほど。1年前の間伐の時に下草もきれいに刈っていたのですが、1年間でここまで成長。実際に刈払機で刈っても、茂みが高く深いため、すぐにはその変化が見えてこないほどでした。「柴刈りは3年くらい続けて、ようやく草木もこんなに伸びなくなる」という人と樹の会の櫻井さんの言葉を聞き、森の整備には時間がかかることを心に刻み、いざ柴刈り作業に。
作業を担当するエリアに、各班のリーダーを先頭に移動。しかし、広場から降りてみると、草木が視界を遮ります。作業のために腰を落とすと隣の人も見えにくくなるので、声をかけあったり、距離をとって作業をしました。刈り始めると、どんどん低木や笹が切れていくものの、やればやるほど刈るべき草木が見えてきて思ったほど進みません。足下に注意し、足場を確認して、みんなが集中して刈り進めていきました。目の前の草木と格闘し、刈った草木を少しずつ重ねてまとめて足下をきれいにしていっていると、少しずつ視界が開けてきて、徐々に茂みも薄くなってきたことに気づいたころに、全体で休憩。それがだいたい作業開始から30分くらいのところで、水分補給をして汗をぬぐったところで、作業を再開。全部で1時間の柴刈りを行いました。「たった1時間」と思われるかもしれませんが、平地ではなく、斜面でバランスを取りながら慣れない力作業をするのは、思った以上に神経も体力も使います。実際に作業が終わって広場に引き揚げてくると、至るところから「ふぅー」「なかなか」といった声が聞こえてきました。
みんなですればスゴイ。人の数の力を実感
さて刈り終わった後の景色は、1時間前とは大違い。
人が入っても肩より上しか見えなかった茂みはきれいになくなりました。また足下までしっかりと見えるようになったおかげで、ポイ捨てされていたゴミが見え、それらを拾いさらにきれいにすることができました。「みんなで柴刈りすると、こんなに景色変わるのか」とそこにいた全員が実感。各班で行った振り返りの中でも、自分たちで刈った場所を見下ろしながら、自分たちで作りだした景色の変化に驚き、みんなでやるとこんなにできるのかと、大きな達成感を感じることができました。
整備のプロであるリーダーたちからも、「この景色の変わり様が、森の整備の醍醐味」と嬉しそうに、参加者の満足そうな表情に応えていました。また、今回は、企業単位での参加がたくさんいらっしゃいましたが、建設会社の方たちは現場監督などを経験されており、マイヘルメットを持参され安全管理はまず服装からとその意識の高さに、リーダーたちも勉強になったと刺激を受けていました。
短くも集中した濃密な時間を終え、ケガ無く無事に作業を終えられたことをみんなで確認。最後は、みんなで柴刈りをするときには定番となりつつある、「どんぐりー」「ころころー」をみんなで唱和し午前中の作業を締めくくりました。
うれし、あたらし、お昼ごはん。豚汁とカルソッツ?!
比治山のある段原で活動されていて、あったまる比治山をはじめ、比治山で活動するときはいつもおいしい手料理をふるまってくれる、ボランティア段原のみなさん。今回は、冬場の屋外にぴったりの豚汁でした。前日から仕込み、当日も早くから広場に来て準備を進め、作業が終わってすぐにあったかいお汁を頂ける状態に。
汗もかき疲れた体にぴったりの、具だくさんの豚汁で栄養と塩分と水分を補給しました。
そしてもう一つの料理が「カルソッツ」。あまりなじみのないこのスペイン料理は、バルセロナがあるカタルーニャ地方の農村の食文化で、独特の栽培方法で育てられたカルソッツというネギを、ブドウ畑の剪定で出た枝を薪にして、豪快に丸焼きするというもの。それが、日本で、それも比治山で食べられるという不思議。
こちらは「しぜんとひろしま」presentsで、スペイン留学中にその存在を知り、広島で再現しているカルロスさんのご提供。
三次のピオーネなどぶどうの特産地のある広島では、ブドウの剪定した枝はこの時期に出てくるので、カルソッツを新たな比治山名物にという夢もあながち冗談ではなく実現するかもしれません。このカルソッツは、箸やフォークは使わず、手で外側の焼け焦げた皮を取り、専用のソースをつけて、あーんと大きな口を開けてバクリ。
なんとも豪快な食べ方ですが、外で豪快に丸焼きされたカルソッツを、こうして食べるのはなんとも気持ちがよく、ネギのおいしさと相まってはまってしまいます。柴刈りをしてスッキリ気持ちよくなるだけでなく、このようにおいしいものを楽しく食べるという別の楽しみも掛け合わせながら、比治山を満喫する。比治山の新たな楽しみ方が加わった気がします。
午後は、富士見台展望台と陸軍墓地へ
過去のととのえる比治山の参加者からの「もっとやりたかった」といった声を受け、今回は午後の部もありました。比治山公園の南側にある展望スポット、富士見台展望台と陸軍墓地の2か所に分かれて、柴刈り作業をしました。この2か所も、ムーアの広場と同じように間伐や剪定と一緒に下草も刈られていましたが、1年を経過し、展望台からの景色を邪魔をしそうな草木も出てきていました。
富士見台は傾斜がきつそうな場所も多く、当初ゆるやかな狭いエリアだけの作業を予定していましたが、午前の作業で感覚をつかんだ参加者は、リーダーの指示に従いながら徐々に作業エリアを広げていきました。
一方、陸軍墓地はこれまでの笹や低木だけではなく、茅(かや)が多く繁茂し、この茅には鎌が活躍しました。こうした植物の特性や作業環境に合わせ、道具を適切に選択し、作業を進めていくことも大切です。長く伸びていた茅を刈り、視界が開けると、比治山の南側からの景色が一望できる状態に。気づくと、遠くに江田島や似島などの瀬戸内の島々、目の前には旧陸軍被服支廠が広がっていました。
午後も参加した人の中には、もっと上手に切るにはどうすればいいかなど、一日の中で経験を積み、技術や考え方に大きな成長感ややりがいを得られた人もいたようでした。今回もリーダーとして技術指導等をしていただいたひろしま人と樹の会の方が、
「普段やっている森の整備は山の中ばかりなので、このように海が見えたり、まちの建物が見えるのはとても新鮮な景色なんです。」
とおっしゃっていたのが印象的で、まちの中にある自然を整備する魅力をまた一つ教えてもらえた気がします。
どんな景色を残したいか。
森に手を入れ、景色を保つことや景色をつくっていくのは、わたしたち次第なのかもしれません。
また、わたしたちがいつも見ている景色は、実は自然にできたものばかりではなく、みんなの力でつくり、育てるものなのかもしれないと気づかせてもらえた気がしました。
ととのえる比治山 vol.05 〜あかるい新年、柴刈りで〜 企画概要
主 催:広島市(政策企画課)・SATOMACHI(和大地の運営チーム)
事務局: 株式会社和大地
協 力:CARLOS、しぜんとひろしま、庭能花園、NPO法人ひろしま人と樹の会、ボランティア段原、林業舎 雨と森(五十音順)
日 程:2020年2月8日 土曜日
時 間:受付開始 8:45- / プログラム開始 9:00- / 午前の部の終了予定時刻 12:00 / 昼食交流会 / 午後の部の終了予定時刻15:00
会 場:比治山公園・ムーアの広場および富士見台展望台、陸軍墓地など
集合場所:比治山公園・ムーアの広場
参加費:200円(保険加入料:事務局側で損害保険・賠償責任保険に加入いたします)
対象:ととのえる比治山リーダー・初心者・チェーンソー経験者 (親子参加:小学生以上を対象)
案内:http://satomachi.jp/totonoeru-hijiyama005/
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