新緑がまぶしい空間で、ゆるやかに笑顔が輝く1日|ゲンビのエンガワ

「〽ハッピーバースデー トゥー ユー!〽ハッピーバースデー トゥー ユー!」

誕生日の定番曲も、いつもと違うJAZZバージョン。さらに、生演奏の音色だと、ひと味ちがいます。初夏の青空の下、カラダもココロも開放した状態で、それぞれが思い思いに耳を傾け、気持ちよく過ごすひととき。その日、いつもとちょっと違う空間が、比治山の広島市現代美術館(以下、ゲンビ)前、ムーアの広場に広がりました。
令和になりたての2019年5月3日の憲法記念日は、実は、ゲンビの30歳の誕生日。美術館で開催されていた開館30周年記念特別展「美術館の七燈(しちとう)」に加え、もっといろんな形で現代美術に比治山でゆるやかにつながって欲しい・楽しんで欲しいと、ゲンビとSATOMACHI(運営会社:和大地)の主催で「ゲンビのエンガワ~アート×ネイチャー~」が実現しました。

それでは、早速その様子を見ていきましょう。

ムーアの広場に次々と広がる「○○ムーア」

ゲンビの正面に位置するムーアの広場が、この日はおしゃれなエンガワ空間へと変貌を遂げました。

ゲンビからムーアの広場を見渡すと、階段は「かいだんムーア」、階段を降りると竹テントが並ぶ「食べムーア」、ムーアの彫刻を超えると「のあそびムーア」が広がり、一番奥の円形ステージ「まあるいムーア」があり、その先には鶴見橋から平和大通りといった広島市内の景色が広がっています。
これらの「○○ムーア」で「癒し」「音楽」「遊び」をテーマにしたプログラムがあったり、様々な「食」を楽しめたりと、それぞれが思い思いの時を過ごせる憩いの空間が広がりました。

【かいだんムーア】みんなでせーの「TA(た)ーKE(け)ー1(ワン)!」

広場入り口の階段に設置されたながーい竹の4つのレーン。そうめん流しでもできそうなその竹は、実はレースのコースです。下のスペースでなにやら親子が「これどうしよっかぁ?」などと一生懸命に取り組んでいる姿が目に映りました。“TAKE-1(タケワン)グランプリ2019予選レース”にエントリーしたレーサーたちによる手づくりマシン(車)作りが進んでいました。お、レースがはじまります。
「せーの」「TA(た)ーKE(け)ー1(ワン)!」このレーススタートの定番の掛け声とともに、一斉にスタート。
「わあ!」「いけぇ!」とさっきまでの黙々とした様子から一変。レースとなると無邪気な歓声があちこちで上がります。自分で材料を選び作った木のマシンが竹のレーンの重力に従って走り下り、1位を争います。やり直しなしの一発勝負。途中でマシンがこけて、ゴールできないマシンもありますが、それも勝負の世界。重心や、タイヤの角度、ボディの重さなど、頭を使う要素も多いですが、年齢や性別に関係なく、みんなで競争できるのも面白いところ。そうした楽しさをそれぞれ味わっていたのでしょう。

【食べムーア】こだわり満載!「特別」ふるシャカ、「オリジナル」豆菓子 and more

階段を降りてムーアの広場に出ると、左右に並ぶ竹テントが待っていました。事前予約をしていた方や先着30名様限定で、なんと“カルビーフューチャーラボ”がふるシャカの“特別ゲンビバージョン”をプレゼント。通常のふるシャカであれば、シーズニング(味付け)は決まっていますが、この日はなんと6種類の味から選べるシステムに。みなさん、どれにしようか、かなり悩んでいました。その隣には、比治山の麓・段原が創業の地、株式会社イシカワがこの日のために開発した「きなこ大豆比治山オリジナル(桜風味)」。比治山の桜を思わせるさくら色のきなこをまぶした豆菓子は上品に甘く、セットのお茶は、世羅町の無農薬で育てた茶葉を使ったのどごしスッキリのほうじ茶。この日の限定品だっただけに、今度はいつ食べられるのか、気になります。他にも、東京と広島に店を構えるスペシャリティコーヒーショップ“OBSCURA COFFEE ROASTERS”。

お子さんや妊婦さんなどカフェインが飲めない人でも飲めるカフェインレスコーヒーで有名な“P-BERRY”。地元・段原で人気のお蕎麦屋「蕎麦切り吟」のそば粉を使った美味しいガレットを今回振るまってくれたケータリングで有名な“CARLOS”が軒を連ねます。

さらに、その安さとおいしさにビックリの海鮮串カツや海鮮ホットドッグを販売するのは地元段原で子どもたちに様々な体験を企画する“段原キッズクラブ”。そして段原在住のお母さんたちでつくるグループ“ボランティアだんばら”が米粉のパンや子どもの日が近いということで柏もちをなどを出店した“段原マルシェ”。広島をカフェテラスでいっぱいにしたいという想いで、お店の前には誰でもくつろげるテーブルやイスが並び、お店の人とのおしゃべりも弾む“カフェテラス倶楽部”と個性的なお店が並びました。

【のあそびムーア】触って、つくって、遊んで、笑顔!

食べムーアでおなかがいっぱいになって、広場中央の彫刻をくぐると、木陰で憩う人たちが。どんなことをしているのか、見てみると、なにやら木に巣箱が取り付けてあります。よく見ると巣箱の中には、小鳥ではなく本が並んでいます。これは、みんなで本をシェアする“本の巣箱”。向こうに目を向けると、普通の将棋のなんど10倍もの大きさで将棋を行う“庭将棋”。将棋初心者には難しい駒(コマ)の動かし方も一目でわかる優しいデザインで、大人も子どもも歩いて両手で持って駒を動かすというとても健康的な将棋を楽しめます。

将棋の横を拠点に、この日のゆるやかな雰囲気をさらに心地よくしてくれたのが、MCの藤井さん。明るく落ち着きのある声とその笑顔で、やさしく場を盛り上げてくれました。その隣では、穴吹デザイン専門学校生が枝とロープでオブジェを作る“ブランチ・シェルターづくり”。自分だけの小さなおうちをつくるような感覚が楽しいです。真ん中の方には、金たらいが置いてあります。水が張ってあって鯉でも泳いでいるかと思ったら、惜しい。水は無く、泳いでいたのは、手すき和紙で有名な大竹和紙で作ったこいのぼり。こいのぼり釣りといったオリジナル遊びコーナーです。竿を持って、この中に糸をたらしたら最後です。釣れるまで、集中して、ここから離れられなくなります。その脇では、子どもたちが落ち葉でいっぱいのビニールプールで笑顔で遊び、その様子は、もう幸せの塊のようです。

【まあるいムーア】体と心をととのえる、ヨガ、座禅、そして音楽!

展望がきれいな広場の先っぽ部分では、円形のステージを囲むようにマットが置かれ、まったりとゆったりとした時間が流れていきました。
まずは、ヨガと座禅。午前中は“お外でのびのびヨガ”をMOMOEさんが、午後は“お外でゆるりヨガ”をつ~じぃ☆さんが行いました。身体と心を整えたあとは曹洞宗普門寺の吉村さんによる“お外で座禅体験”です。空の下で行うヨガや座禅の体験はやはり格別なようで「気持ちよかった~」「楽しかった!」といった参加者の声が聞こえました。
心地よい如月の風に頬を撫でられながら、柔らかい緑の日差しの下、身体を動かして、じっくりと自分と向かい合うというとても贅沢な空間・時間を楽しみました。途中には、いきなりアートが出現?!まさか自分がアートになるなんて思いません。“ゲンビの動く彫刻になろう”というコンテンツでアーティストの玖島雅子さんに突如巻き込まれた方々は、「え~?」「うそぉ~?」なんて言いながらも楽しそうに、自分とみんなの体をいっぱい使ってオリジナリティあふれる表現を生み出していました。

そして、一日を通じて聞こえる生演奏による音楽の数々。エリザベト音楽大学サクソフォーン専攻科の女性4人によるサクソフォーン四重奏“Liberte Quartet”。同大学トラペット専攻の3人の“TrumpeTrio”によるトランペットアンサンブル。冒頭で紹介したバースデーソングも披露してくれた広島大学ジャズ研究会“ViBirth”によるジャズ。そして、神出鬼没でみんなを楽しませてくれる広島大学教育学部生の”しろくまリコーダー合奏団”の音色が響き、会場に賑わいを添えています。しろくまリコーダー合奏団はまるで童心に帰ったような気分にさせてくれる愉快な仲間たちでしょうか。あとを追って子供たちもきゃっきゃと喜びの声をあげています。
コンサート会場ではなく自然の中に響く音楽は、静かに耳を傾けたり、ぼんやりとしながら聞き入ったり、軽く体を動かしてリズムに乗りながら、ちょっとしたおしゃべりしながらと、そこに集う人たちの思い思いの過ごし方を寄り添うように受け止めてくれました。

ゲンビのエンガワの時間はこうして過ぎ去ったのでした。またどんなカタチで日々の暮らしと現代美術とをつなぐ場が生まれるのか楽しみです。

Photo: Kenji Kagawa

Write: 地粋発掘ライター・つじりゅういち

【実施概要】

名 称: ゲンビのエンガワ
主 催: 広島市現代美術館・SATOMACHI
事務局: 株式会社和大地
協 賛: カルビー株式会社 Calbee Future Labo
協 力: 学校法人穴吹学園 穴吹デザイン専門学校、iegoto、イオンモール株式会社広島段原ショッピングセンター、株式会社イシカワ、有限会社一場木工所、株式会社エージェントゼロ、エリザベト音楽大学、大谷一真、OBSCURA COFFEE ROASTERS、香川賢志、カフェテラス倶楽部、CARLOS、玖島雅子、しろくまリコーダー合奏団、Sukima,、曹洞宗八屋山普門寺副住職 吉村昇洋、段原おやじの会、段原キッズクラブ、段原地区町づくり協議会、つ〜じぃ☆、中村けんたろう、庭能花園、P-BERRY、一般社団法人ひろしま森のおもちゃ協会、広島市まんが図書館、NPO法人ひろしまジン大学、広島大学ジャズ研究会、藤井香苗、ボランティアだんばら、モチプロ・サポーターズ、MOMOE(五十音順)

日 程: 2019年5月3日(祝・金)
会 場: 比治山公園・広島市現代美術館・ムーアの広場など

タイムテーブル:詳細: https://satomachi.jp/blog/2019/04/10/genbi-no-engawa/

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