SATOMACHI/さとまち

街中の自然を味わう仕掛けで、未来を創る。

〈REPORT〉会って、和んで、温まる、街のソーシャルアウトドア| あっ”たまる”比治山2022 DAY2 12.4

心配していた雨予報もなんとやら。皆の思いが天に届いたか、日頃の行いを神様が見ていたか、「あっ“たまる”比治山」2日目は、見事な快晴サンデーに。柔らかい冬の日差しに包まれた比治山公園で誕生した、小さなドラマの数々を綴っていこうと思います。

誰もが輝けるサッカー│ウォーキングフットボール

「あっ“たまる”比治山」にて、2回目の開催となるウォーキングフットボール。今年は、雨天予報を考慮して、午後からの開催です。

その名のとおり、ウォーキングフットボールとは、歩いて行うサッカー。年齢や性別、障がいの有無に関わらず、皆でスポーツを楽しめます。基本ルールは、「全員が歩いてプレー」、「ヘディングなし」、「ボールを奪わない」の3点。そして、一番大切なのは「笑顔で、怪我をしないよう最後まで楽しむこと」だと話してくれた、A- pfeile広島の松本由香さん。さらに、プレーが進むうち、参加する人それぞれの個性に合わせルールが変化するのも、ウォーキングフットボールの特徴です。

今回は特別ゲストとして、アンプティサッカー選手であり義足タレントとして活躍する谷口正典さんが登場。一緒にウォーキングフットボールを楽しみます。

義足を装着した谷口さんを目の前に、子どもたちは一瞬、言葉を失った様子。しかし徐々に距離は縮まり、「なんで、足がないの?」「怪我したの?」と、ストレートな疑問が投げかけられます。それらの質問に丁寧に答える谷口さん。交通事故で足を失ったこと、強く蹴られたボールは急にはとれないこと、それでもサッカーができること、何事も包み隠さず話す様子は、凛としてスマート。さらに、ピカピカに輝く義足の、なんてかっこいいこと!

初めて見る義足のサッカープレイヤーに、少し遠慮気味だった子どもたちですが、いざプレーが始まれば、心のバリアが取り除かれていきます。谷口さんへの配慮を忘れず、自分自身、そして全員が楽しめるサッカーを、各々が考えて動く様子が伺えたのです。

A- pfeile広島のような障がい者サッカーの環境を整える活動をしている一般社団法人広島県インクルーシブフットボール連盟は、2022年度に文部科学大臣表彰を受賞。「この3年間で、約1000人の方が、ウォーキングフットボールに参加してくれました。サッカーの新しい楽しみ方を、もっともっと、たくさんの人に知ってもらいたいですね」と松本さん。

知らないことや、自分と違うことを目の前にすると、大人でも時折「怖い」と思うものです。しかし、まず大切なのは、きっとお互いを知ること。ウォーキングフットボールで、みんなに優しい社会のかたち、見つけてみませんか?

食べる楽しみ、味わう喜び│しぜんとひろしまブース

食べる楽しみにも心が躍ります。

2日目に私がいただいたのは、「三段峡黒淵荘」さんの猪汁とかまどんごはんです。実は1日目、「アンケートに答えてもらえませんか?」と、突然に声をかけられました。笑顔いっぱいの彼女たちは、広島修道大学の学生さん。民泊にて出会った、おじいちゃんやおばあちゃんの優しさに触れ、ぜひ恩返しをしたいと、「広島修道大学地域つながるプロジェクト2022『安芸太田にきてみんさい!』を8名で発足。地域の課題解決や活性化に取り組んでいるそうです。そのひとつが、イノシシを活用した特産品の商品化。イノシシ被害に悩む現場を救うべく、安芸太田町と一緒に、イノシシ商品の開発を目指しているといいます。

地元の食材をフルに使った猪汁は、超絶品!冷えた身体を芯から温めてくれました。そして、若い世代が、里山の課題に挑戦する姿勢に感動。心から応援します!

オープン早々、行列ができていたのが「oshino-sweets」さん。イベント出店をメインにファンを増やしている、シフォンケーキと焼菓子のお店です。見た目もかわいいスイーツは、味ももちろん極上。

「お菓子は非日常だと思っています。かわいいも一緒に味わってほしい」と吉川志乃さん。しっとり、フワフワ、そしてかわいいも丸ごと、パクっと!甘い幸せ、贅沢にいただきました。

スイーツと一緒に味わいたいのは、やっぱりコーヒー。今年初出店となる「​BREATH HIROSHIMA」さんのコーヒーを、甘いもののお供にいただきました。並んでいたのは、3種類のコーヒー。その全てに、国名や生産者名が明記されています。「珈琲豆の生産者に敬意を払い、価値ある一杯を届けたい」とオーナーの佐藤さん。

同店は2021年、シングルオリジンのスペシャリティコーヒーを専門とするロースターとして段原にオープン。新進気鋭のニューカマーとの出会いも、「あっ“たまる”比治山」のお楽しみ。ハンドドリップで淹れられた香り高い一杯には、並々ならぬ熱い思いが溢れていました。

カルロスの絶品料理!まだの方はぜひ味わって欲しいです!
比治山の麓にある厨らぱらぱさん。初参加でしたが大人気!!!
サルサが人気!
比治山の湧き水を仕込み水にしたビールを作ってくれている石見麦酒さん。今回は唐揚げも最高でした!
地元、ボランティア段原さんのぜんざい。即完でした!
大和重工さんのかまどんで炊くぜんざい。間違いなし!
SEIRAさんのヴィーガンドーナッツ。子どもも大人も好きなやつです!
いろいろ遊べそうですよね。
チャイが美味しかったSAVAGEさん。

広島の「すごい」を丸ごと体験│パークセッション

体験型のワークショップも大盛り上がり。

「ほしはら山の学校」ブースでは、三次産のお米の藁を使ったしめ飾りづくりが行われています。米藁でしめ縄をつくる文化を残したいと、三次市で20年間続けられる取り組みだそうです。大きさも、飾りつけも、自分のお好みで。「藁くらい、自分でなえたほうがかっこいいぞ、日本人」と、名言を残してくれた同団体副理事長の浦田愛さん。私も来年、必ずチャレンジしてみます!

「あぐらや」さんの型染めコースターづくりでは、子どもたちが真剣に色と向き合っています。

オリジナル型紙は、もちろん染色作家Megさんの手作りです。おめでたいものをモチーフにした型でつくるコースターは、カラフルでポップ!何より、子どもたちの大胆な色使いに惚れ惚れしてしまいました。

トントン、カンカンと音が鳴り響く「よしだかざり」さんのブースをのぞくと、何やら皆さん、金属で何かをつくっている様子。こちらでは、仏壇金具の制作と修復を行う「吉田佛檀金具製作所」の5代目・吉田州伸さん自ら、端材の真鍮を使ったアクセサリーづくりを教えてくれています。吉田さんは、広島仏壇金具部門の伝統工芸士。仏壇を鮮やかに彩る、数少ない錺金具の匠なのです。ここ数年、手作業の錺金具技術を知ってもらいたいとの思いでワークショップや体験授業を開催。伝統工芸士の高齢化が進み、純粋な広島仏壇が消滅してしまう危機に瀕しているといいます。かくいう私も、錺金具に触れたことは全くなく、吉田さんのお仕事や、その歴史について初聞きし驚愕。広島が誇るものづくり文化、大切に残していきたいものです。

ものづくりだけでなく、広島の自然にも触れられるチャンスもあちこちに。

「広島自然観察会」の前を通っていると、「どんぐり食べる?」と声をかけられました。「え?!どんぐりって食べられるんですか?」を返すと、「もちろんよ」とニッコリ笑ってくれたのは、同観察会のメンバー、飛田俊子さん。

炒ったどんぐりの皮を器用に剥いて中身を取り出してくれました。恐る恐る食べてみると…「おいしい…!」。栗のようなほのかな甘みがあります。聞くと、シイ・マテバシイ属のドングリは食用が可能。そして栄養も豊富で、縄文時代の食生活に欠かせないものだったとか。来年の秋には、食べられるドングリ、子どもたちと見つけてみようと思います。

オーダーメイドで薪ストーブを作っている安芸高田市「Maki式薪ストーブ」さんでは、ロケットストーブを使ったお手軽ポップコーンづくり体験が行われています。たくさんの手作りストーブの横に置いてあるのは、大きなカヌーです。さぁ、こちらにも世界レベルのアスリートが登場!なんと同店の息子、岡崎七星さんは、2022年度のワールドチャンピオンシップジュニア部門で銅メダルを獲得したカヌー選手なのです!

「カヌーはまだまだマイナーな競技です。もっと知ってもらうべく、カヌーの魅力をどんどん発信していきたいと思います」と岡崎選手。

今年度の「あっ“たまる”比治山」は、日本を代表する広島のアスリートたちと触れ合う機会がたくさん設けられていました。自然、アウトドア、ものづくり、そしてスポーツ。一見、関りのないように見える個々の存在ですが、それらがごちゃまぜになる社会こそ、きっと私たちが望む、希望ある未来の広島でしょう。岡崎選手の今後からも、目が離せません!

無印良品さんのまちの保健室の出張所。焚き火に癒されながら、からだの悩みを相談!
いつもかっこいい野塾さん。今回は子どもが楽しめる出し物をやってくださいました!
本気のやつ!
モルック広島さんによるモルック。ハマっちゃいます。
今度は大会もやりたいですね!
まんがもやっぱり人気!まんが図書館さん、いつもありがとうございます。

世界一おいしい比治山メイドの焼き芋を

待ちに待った焼き芋タイムは、14時から。今回つくる焼き芋は、2日間でなんと約1000個!BINGO BBQ協会代表、向井秀樹さん監修による、世界一おいしい焼き芋に、たくさんの人が列をなします。

なぜか今日から「テキサス」と呼ばれ始めた向井さん(笑)。テキサス…、確かにテキサスな雰囲気をお持ちですが、日本各地では「ヒデキ」という通称で通っているそうです。広島のお芋マスターヒデキ、またはテキサス!大人も子どもも、こんな素晴らしい笑顔になる焼き芋、また来年もどうぞよろしくお願いしますね!

 

レッツワンココミュニケーション│INUTOMOBA

今年度より初めて設けられたのが、わんちゃんたちの交流、そして遊び場「INUTOMOBA」です。コンパクトなドッグランでは、飼い主さんたちに見守られながら、たくさんのわんちゃんたちが尻尾を振っています。こちらをサポートしてくれたのが「京橋川犬とも倶楽部」の皆さんです。メンバーは約60人。夕方、同じ時間帯に京橋川沿いをお散歩していたことから結成し、今では、犬にまつわる悩み事などの情報交換の場を設けているといいます。

初対面ではすぐに打ち解けられないわんちゃんも、少し時間がたてば、ドッグラン内でおおはしゃぎ!楽しんで走り回る姿が見られました。人間も動物も、関係性の構築はきっと同じです。時間をかけ、距離が短くなるほど、グッと仲良しに。

子どもたちがキラキラと目を輝かせ、わんちゃんと触れ合う様子も、とても幸せな光景でしたよ。

 

過去の比治山、未来の比治山│KATARIBA

2日目の語り合いの場「KATARIBA」のゲストは、比治山の麓に立つ「真言宗多聞院」副住職の亀尾泰弘さん、「ビームス広島」スーパーバイザーの江口裕さん、そして「RCC中国放送」に勤務するや八尋智仁さんです。この3人の共通点は、地元が比治山。つまり根っからの比治山っ子勢です。「みんなの裏山」をテーマに、昔懐かしい比治山、そして今後の比治山についてのトークセッションが行われました。

3人のお話で、生まれ育った年代により、比治山への関わり方が全く違うことが判明。50代の八尋さんにとって、比治山は遊び場ワンダーランド。学校が終わってすぐ、友達と山に集まるのが日々の光景だったといいます。一番思い出に残っているのは、今はもう存在しない天然のすべり台。急こう配の坂を、度胸試しで滑る遊びで盛り上がっていたそうです。

江口さんも、自身の庭といえば比治山。小学生の頃、藤子不二雄A氏による漫画「プロゴルファー猿」が大流行し、その急な坂を使って、ゴルフの真似事をして遊んでいたといいます。加えて、スケボーで友達と戯れるなど、集まる場所といえば比治山だったそうです。

しかし、亀尾さんの世代になると、それらの行為は全部禁止。家のすぐ裏手にありながら、比治山で遊んだ経験はほとんどないそうです。学校から禁止されたことはもちろん、ファミコンなどのゲーム機が登場し、外で遊ぶ機会自体が少なくなったことも起因していると話します。

1日目のレポートで書いたように、比治山で遊んではいけない段原小学校のルールは、2022年度より撤廃されました。小高い山の中で、自然と友達と遊び学ぶ環境が、数十年の時を経て、子どもたちの手に戻ってきたのです。今後は、未来を担う子どもたち見守り、比治山の環境整備に尽くすのが大人たちの役目となります。

 

近い将来に向け、さまざまなアイデアが飛び交います。よりアクセスしやすい駐車場の整備、現代美術館やマンガ図書館も含めたイベントがすぐにわかる掲示、イベント開催と同時に行うラジオの公開収録、新しい登山道の開拓、「あっ“たまる”比治山」用の焼き芋畑づくり!(笑)、など楽しい企画案が次々に出されます。実現が不可か不可能かはとりあえず置いておきましょう。「こうなったらいいな」を現実にするのは、まず語り合うことから始まるものです。

最後に、MCキムラミチタさんより、アパレル業界に長く勤める江口さんへ「服についた煙の匂い、どうしたらとれますか?」という質問が。確かに、長く煙に燻されると、アウターに付着した匂いがなかなかとれません。実は私も、この2年連続、子どもたちから「ママ、なんか、ウィンナーの匂いがするよ」と言われ続けています(笑)。

 

江口さんから出た答えは……、ファブリーズ!または、数日間陰干しをするとよいそうです。

「あっ“たまる”比治山」で匂いに悩まされた方、来年はぜひお試しを!

 

はじめましてとおひさしぶりと│後書き

2日間のロングレポート、ここまで読んでくださった方、誠にありがとうございます。

ここに書いたのは、比治山で起こった出来事を、ほんの少しだけ切り取ったものです。実際には、もっとたくさんの驚きや発見があります。SATOMACHIスタッフさんの苦労や奮闘も含め、全てを書ききれず、申し訳ない気持ちです。

私がレポートを書かせてもらうのは、昨年に引き続き2回目です。2年目になると、知り合いも増え、「お久しぶりです」と言葉を交わし、徐々にではありますが、皆さんひとりひとりの心の中が、うっすらと見えてきます。もちろん、「はじめまして」の方もたくさんいます。来年もきっと、その「はじめまして」が「お久しぶり」に変わることを願い、このレポートを終えたいと思います。

焼き芋だけ食べたい、なんか楽しそうだから寄ってみたい、子どもを外で遊ばせたい、何かおいしいものを食べたい、知り合いがいるからいってみたい。

「あっ“たまる”比治山」に参加する理由は、些細なことでかまいません。理由がなくても、咎まれることもありません。誰をも拒まず、取りこぼさず、自由に、優しく迎えてくれる温かいスタッフたちが、皆さんのお越しを、首を長くして来年度も待っていますから。

TEXT:大須賀あい PHOTO:香川 賢志

OUTLINE

名 称: あっ“たまる”比治山 2022 https://satomachi.jp/attamaru-hijiyama2022/
主 催: 広島市(政策企画課)・SATOMACHI(市の業務受託者㈱和大地の運営チーム)      事務局: ㈱和大地

協 力: あぐらや、OUTDOOR SAVAGE 、一般社団法人安芸高田市観光協会アフィーレ広島、淡野製作所株式会社、株式会社イワタ木工、株式会社石見麦酒株式会社エージェントゼロ、oshino-sweets、かけっこスクール、賀茂泉酒造、カルビー株式会社 Calbee Future LaboCARLOS、カワムラ、キムラミチタ、京橋川犬とも倶楽部、GetHiroshima、株式会社ゴールドウイン、これからの学びネットワーク、三段峡黒淵荘、真言宗多聞院、スパイスと酒 山椒魚、SEIRA SKIN FOOD STAND.、一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブ大和重工株式会社、段原キッズクラブ、段原地区町づくり協議会、一般社団法人地域商社あきおおた、厨らぱらぱ、TONQAL、庭能花園、野塾野良道具製作所、ひじやまがすき実行委員会、P-BERRY、ビームス広島、広島環境サポーターネットワーク、広島県BMX協会、広島自然観察会、広島市シェアサイクルぴーすくる、広島市現代美術館広島市まんが図書館NPO法人ひろしまジン大学、ひろしま森のおもちゃ協会、BINGO BBQ協会、BREATH HIROSHIMA、ほしはら山のがっこう、ボランティアだんばら、Maki式薪ストーブ、みやうち冒険あそび場の会、無印良品、モルック広島、山口ようこ、ヤマノイ株式会社、湯来交流体験センター、YUYA ROAST、よしだかざり.、wine Uluru、ワンダフル商店 幅屋(五十音順)
総合MC:キムラミチタ

日 程: 2022年12月3,4日(土,日)
時 間: 3日10:00-日没まで 4日10:00-15:00
会 場: 比治山公園御便殿広場・まんが図書館奥

 

 

 

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