今回は、”ぶらり比治山”とし、お手伝いさせていただいている比治山公園のにぎわいづくり業務として開催しました。ある分野のスペシャリスト(専門家)と一緒に比治山公園をぶらりと歩くことで、隠れた魅力を参加者の皆様と一緒に引き出し楽しむイベント。今回は、「セミ」に注目し、セミ博士になって生態調査をしました。
セミ博士は、鳴き声から?!
「ミーン、ミーン、ミンミンミンミン」「シュワシュワシュワシュワ」「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ」
集合場所の集会所には、お母さんと一緒に目を輝かせた女の子や、マイ網とマイ虫かごを持ってきた気合十分の男の子が続々と来場。そこで出迎えてくれたのは、セミの鳴き声。外の天気は曇り空であまりセミは鳴いてないのに、部屋の中の方がしっかり鳴いているという謎。
実は部屋にセミがいるのではなく、BGMでセミの鳴き声の音源が流れていたのです。室温は変わらないはずなのに、少し暑くなったように感じてしまうのが不思議です。いい感じ。
スペシャリストは、いきもの大好き・上田さん
全員集まったところでオリエンテーション。「ぶらり比治山」のこと、この日のプログラムの流れや注意事項の話の後、協力助っ人・広島環境サポーターのみなさんが紹介されました。自然のことや環境のことに詳しい6名のサポーターのみなさんが、参加者グループに入って、セミや抜け殻の採集を手伝ったりと、きめ細かくフォローに入ってくれます。心強い。
そして、今回のスペシャリスト、上田康二さんのご紹介です。「こんちゅう大好きおじさん」こと自然観察指導員の上田さんは、いきもの大好き、植物も大好き、もちろんセミについての知識もすごく豊富な方。ロケ番組など見ていても、映像を見ずに、セミや虫の鳴き声を聞きとろうとする筋金入りです。比治山のセミを観察で一緒にぶらりしていただくのに最高に頼もしいスペシャリストです。
セミ博士への第一歩。それは、上田さんからのセミについてのお話でした。
8月中旬の今の時期に比治山で観察できそうなセミは、ミンミンゼミ、クマゼミ、アブラゼミ、ニイニイゼミ、ツクツクボウシの5種だそうです。さらに胴体や羽の色、形、大きさなどを、テーブルに用意されたセミの写真パネルや手元のしおりを見ながら教えてもらいました。
なんと上田さんはシャーレに入れた抜け殻も持参。テーブルごとに見て回します。参加者は、これを見つけるんだと意気込みながら、本当に見つかるんだろうかとちょっと不安も垣間見える、そんな瞬間でした。
網だって自分でつくりますよ。だってセミ博士だもん。
セミについて少し知識が深まり、セミに早く会いたくなってきたところで、捕獲調査に使うセミ取り網の手作りワークショップに入ります。材料はポリ袋とワイヤーハンガー、そして比治山で前もって拾っていた木の棒。硬いワイヤーを切ったり曲げたりするちょっと難しい作業は大人も少しだけ手伝いますが、子どもたちも考えて工夫して、10分ほどでどんどん完成させていきました。自分で作ったセミ取り網にみんな満足そう。完成した網を嬉しそうに振り回す女の子もいい笑顔です。
めいめいの手作り網を握りしめ、いざ、比治山へ。
セミ探索スイッチが入っているのか、集会所から比治山への徒歩移動の間に勝手に探検しちゃう子も。お兄ちゃんと参加した男の子は、セミの羽らしきモノを見つけては一生懸命お母さんに見せていました。
エッヘン。すぐにセミとり名人
スカイウォークを上がり、調査場所の比治山公園へ到着!するやいなや、すぐそばで鳴くセミを何匹も発見。さっそく捕っている子もいました。注意することと集合時間を改めて確認し、調査開始です。4つのグループに分かれ、思い思いの方向に散らばっていきました。
鳴き声はするのに姿が見えないオス、鳴かずにひっそり手の届く場所でとまっているメス。普段なにげなく通っている遊歩道でも、道沿いの木々に目を凝らすとたくさんのセミが暮らしていることに気がつきました。子どもたちはすぐに、セミを見つける名人に。高いところにいるセミもたくさん見つけます。「あっ!見つけたー!!」とすぐに駆け出して教えてくれます。見つけたセミを捕まえるのも一苦労。手の届かない場所にいるものには念を送り(こっちにおいで~)、届く場所にいるセミにアミをかぶせてget!と思いきやカゴに移す時にバタバタ逃げられるなんてこともあり…。
大人たちの方も、しっかりと夢中でセミを追いかけていました。
上田さんや広島環境サポーターのみなさんに教えてもらったセミを見つけるためのヒントを、少しご紹介すると、
- セミはその木の上のほうに留まることが多い。枝の先端に見つけた場合も絶対に無理をせず、手の届くところに見つけたセミをとる。サクラなど低木のほうが狙いやすい。
- 土から出たセミは地上近くの葉っぱの裏で脱皮して成虫になる。このため、土にたくさんセミが出てきたような穴があったり、セミの抜け殻をたくさん見つけたりする場所があれば、その木や周りの木にセミがたくさんいるということ
冷めることないセミへの情熱
名人たちが見つけたのはセミだけではありません。見たことのない珍しい幼虫も捕獲しました。上田さんに見せると「シャチホコガの幼虫だね」と教えてもらいました。比治山公園を駆け巡り、45分間の探検はあっという間に終了時間を迎え、十分な採集を終え、集会所へ戻っていきました。
戻ってからも冷めないセミへの情熱。戻ってきた男の子は靴を脱ぐよりも先に、「ねえねえ、なんでアブラゼミは『アブラゼミ』っていうのでしょーか!」とクイズを出してくれました。目がキラキラの、立派なセミ博士です。ちなみにアブラゼミの名前の由来は、フライパンに油を熱したときのじりじりという音に鳴き声が似てるからだとか。
数える、まとめる、描いてみる。セミ博士の調査報告づくり
調査を行ったら、報告書を作成して共有するのが博士です。セミ博士たちは模造紙に比治山の地図を貼り、セミやセミの抜け殻を発見した場所に大小のシールでしるしをつけました。
色分けして説明書きを加えることで、どの種をどこでどのくらい見つけたか一目でわかる報告を作っていきます。報告をまとめる間も上田さんは各グループのテーブルを回り、次々に出てくる質問に答えながら、惜しみなくセミ知識を共有してくれました。もうそれは知らないことばかり。例えば、
- オスとメスは明確に体のつくりが違う。オスはおなかの両側に大きく鳴くための太鼓のような器官があり、内側には拡声器として機能するための筋肉が発達している(ゴリラのドラミングを思い浮かべてしまいました)。メスはそれがない代わりに、枯木の茎に卵を埋め込むためにおしりの形が尖っている。
- 寿命について。昆虫のなかでも、成虫になって口が退化する昆虫は寿命が短い傾向(食事ができず、栄養を外からとりこめない?)。セミは一般的に2週間ほど。34日間飼育したという人も。野生か飼育かの環境の違いでも差が出てくる。カブトムシを3年飼った、クワガタを5年飼ったという話もある。
- セミの抜け殻のそばの土には穴ぼこがたくさんあることがある。これは必ずしもセミの数が多いということではない。今外に出ても危険ではないだろうか?生き延びられるだろうか?と、数日間、出ようかどうしようか悩むときにできる穴ぼこ。
- セミが出てくる数は毎年一定ではない。セミを捕食する天敵を増やさないため。
- セミの天敵はカラスやタヌキ。夜に孵化するときの柔らかいセミを狙っている。高脂肪高たんぱくで、まったりしつこい味わい。
- 抜け殻をよく見ると、背中に白い筋(すじ)のようなものがある。体内に空気を取り込むための穴がおなかにあり、この白い筋はそこへ通じる管。つまり、抜け殻でこの管が見えるということは、体の中も「脱皮」しているということ。
そうこうしているうちに、地図がたくさんのシールや書き込みで埋まってきました。仕上げにひとりひとり今日の感想を色紙に書いて貼り、調査報告シートの完成です。
完成後は、他のグループの報告シートを見に、全員で各テーブルを巡ります。思い思いのイラストを添えたグループや、たくさん拾ったセミの抜け殻を貼り付けたグループもありました。最後は参加者がそろっての記念撮影。調査報告シートを持ち、みんなで声を合わせてセミの鳴き声をしたら、捕まえたセミも鳴きだしました。笑顔とセミの音が印象的な一日でした。
「実は僕自身もセミ取りするのは初めてなんです」
そう教えてくれたお父さんもいました。父子そろって初めての経験、お父さんも息子さんも忘れられない夏の思い出になったかもしれません。
この日の調査結果
今回作成した調査報告シートは、広島市森林公園こんちゅう館と段原イオンショッピングセンターに各一定期間貼り出されました。
広島市森林公園こんちゅう館|9月30日まで
段原イオンショッピングセンター|10月4日から 4Fコワーキングスペース
ぶらり比治山 vol.3“比治山のセミ博士になろう!生態調査体験” 企画概要
主 催:広島市・SATOMACHI
事務局: 株式会社和大地
協 力:イオンモール株式会社広島段原ショッピングセンター、EPOちゅうごく、広島県自然観察指導員連絡会、広島市森林公園こんちゅう館
日 程:2019年8月19日(月)
時 間:9:00集合 12:00終了予定
集合・解散場所:段原南一丁目集会所(住所:広島市南区段原南1-13-27)
参加費:200円(保険加入料:事務局側で損害保険・賠償責任保険に加入いたします)
案内:https://satomachi.jp/blog/2019/07/19/burari-hijiyama003/