波紋のように広がる比治山のタノシミカタ。自分を知り、互いを知り、知らない世界に触れる。

身近にある自然の中で、自由に楽しむことを、特別なことではなく、日常に。そうした思いを持って始まった、比治山公園をフィールドに多様なプログラムを体験し楽しめる月1回のPark Session Day。夏の余韻がまだ残る9月のPark Session Dayは、ラン、いきもの、動画の3種類のSession(セッション)が開催されました。

朝日とともに、ゆっくりランSession

朝の7時から集まって、走る気マンマンのみなさん。顔が疲れていないのは、これは走る前に撮ったものだからです。走った後のみなさんは、新しいコースを発見した喜びと、そのコースを走った充実感、そしてもっとここを走っていきたいとワクワク感にあふれ、もっといい顔をされていました。

この日、プレゼン資料を準備し、熱くトレランのトレーニングやスマートウォッチについて語るのは、ランSession Directerの入間川穂高(いるまがわほだか)さん。ウルトラトレイルランニングで世界を目指し、海外のレースにも参加している本格派ですが、実はそのトレーニング拠点が、なんとこの比治山公園。ここで毎日のようにトレーニングをし、知り尽くしたこの比治山公園をランニングのコースにするならばと、第1回比治山PARK RUN RACEの4.5Kmに及ぶコースを考えたコースディレクターでもあります。

自分のペースを知る。

入間川さんによれば、比治山公園は、トレラン的なコースとしては勾配などはややゆるめだけども、トレーニングをするには最適らしく、週6日、朝6時くらいから走っているとのこと。さらに、トレーニングの時に大切にしているのは、コースのきつさや長さではなく、今やっているトレーニングの目的を意識し、質を上げることだそうです。
そのためにも欠かせないのが、スマートウォッチ。自分のトレーニングでの記録をデータベース化でき、自分のペースを知ることができる。「自分のペースを知る」というのは、山の中を走りペースがわからなくなりやすいトレランでは、非常に重要なことであり、レースの戦略を考えるときの大事な拠り所にもなるのだそうです。

「比治山はアップダウンもあって、トレランには持ってこいだと思う」といった意見はよく耳にしていましたが、いざ、このようにコースが設定されると、走れるか不安になります。普段から走っていない、運動していない人であればなおさらです。しかし、実際に入間川さんと試走していると、実は歩く場面もありました。
「無理だと思えば、歩けばいい。無理してずっと走るよりも、自分のペースで進むことが大事」
まずは歩くところからでもいいかもしれません。自分のペースを大切にしてくださいとのこと。

耳をすませば、見えてくる。秋の虫探し。

いきものSessionの今回のテーマは、「秋の虫」。秋の虫と言えば、唱歌「虫の声」に出てくるような、様々な虫の声。松虫、鈴虫、コオロギ、くつわ虫に、すいっちょん。秋の夜長を、心地よく楽しませてくれます。夏のような暑さが残る中、虫探しが始まりました。

前回8月のいきものSessionに続き、Directerの「生き物大好きおじさん」上田康二さんから、虫にまつわるあれやこれやをたくさん教えてもらいました。その中でも特に印象深かったのが、「耳と目が良いと、虫取りが上手」の一言。上手な人は、耳でどのあたりにどんな虫がいるのかを見つけて、そこに近づいてから目で見つけ捕まえるのだそうです。では、耳が良くなるにはどうすればいいのか?

知らない音の世界が広がる。

そこで今回、最初にやってみたのが、サウンド・スケープ。目で見たものを絵に描くのではなく、耳で聞いたものを絵に描くワークショップ。これがなんと、5分間、静かに一生懸命耳をすませる。そこで聞こえてきた音、例えば、右上のちょっと離れた所からカラスの声が聞こえたら、それを自分なりに図柄などを使って紙に絵として描きとっていくのです。
驚いたのが、5分間という時間。あっという間かと思っていたら、結構長い感じが。それもそのはず、考えてみると普段5分間も意識的に耳を澄ませることは、めったにないことに気がつきます。町の音、車の音なども遠くに聞こえ、まだまだ元気なセミの声が近くで聞こえる。耳に意識を集中させると、知らない音の世界が広がっていました。

サウンド・スケープの後は、虫取り。でも、それぞれ草むらや落ち葉の下を探しても、なかなか見当たらないので、上田さんから作戦変更の指示。その名も「ブルーシート作戦」。みんなで、草場や落ち葉のエリアから、広げたブルーシートに向けて虫たちを追い込み、ブルーシートの上で見やすくなったところで虫を捕まえるというもの。ブルーシートを広げたものの、みんなで虫を追い込むための足並みがなかなかそろわず、なかなか虫が出てこない。そんな中でも、網では逃げられる小さな虫でも見逃さずに、見たこともない道具を使って捕獲する上田さん。

親子で草むらを虫を探して歩きました。耳を澄ませて音を聞く。網や足でつついて、動きがないか観察する。じっと目を凝らして、探してみる。思うようには、秋の虫は見つかりませんでしたが、それでも、セミがいたり、アゲハチョウがいたり、どんぐりがたくさん落ちていたりと、目を向ければいろんな楽しいものに出会えました。

ショウリョウバッタに、カタツムリ、コカマキリに、ナナホシテントウムシ。
捕まえた生き物は、最後の振り返りの時に、上田さんに見てもらって、どういう名前の生き物か、その生き物のおもしろいところなんかを教えてもらいました。みんなで、見せ合いっこした後は、自然に返してあげました。

大人、楽しむ、動画Session

新型コロナウイルスのこともあり、直接会いづらくなる中、ニーズが高まっている動画撮影。写真だけでなく、「かっこよく動画に撮って、アップできれば」と思う機会も増えたのではないでしょうか。気持ちよい自然の中で、かっこいい映像が撮れると最高!と思って企画し、希望通りの晴天の下、比治山に拠点を置く映像クリエイターの織田泰正さんをDirecterに招き、技術やポイントを教えてもらいました。

織田さん曰く、「知っているだけで、全然違う」のだそうです。
例えば、スマホを使って、簡単に撮影・編集できる便利なアプリがあり、それはプロの目から見てもお薦め。また、構図を知っておくと、整った画になり、シャープになる。スローモーション撮影も結構使える、などなど。プロの人たちは、こうした知識や技術を組み合わせて応用しているのであって、初心者の方でもこういったことを知って、意識して活用していくことで、格段にいいものになっていくらしいです。

そんな織田さんのレクチャーを聞いた後は、実践あるのみ。参加した大人たちが、真剣な表情で、学んだことを意識しながら、試しに思い思いの動画を撮っていきました。

使うアプリが一緒でも、何に魅かれ、何を撮るかは、まさに千差万別。自分が撮りたいものが、イメージ通り撮れたかどうか。織田さんに確かめたりしながら、また参加者同士で話しながら、新たな技術に挑んでいきました。

もっと大人が遊べる時間を。

最後は、撮影した動画を、参加者みんなでシェア。と言っても、みなさん、人に見せるのは恥ずかしかったみたいですが、他人に見てもらうことで客観的に自分の撮ったものを見ることができ、他の人の動画を見ることで、自分になかった視点や撮り方に気づくなど、学びが大きいのだと織田さんも言われていました。
傍から見ていて、大人が楽しそうに、スマホ片手に、あーでもない、こーでもないと言っている姿は、微笑ましくもあり、とてもよかったです。そして、もっと大人が遊べる時間を増やしていくことも、大切かもしれないと感じました。

波紋のように広がる比治山の楽しみ方

「3つのセッションを振り返ってみて、参加している人は本当に違うけど、何か共通点はあるの?」と不思議に思われるかもしれませんが、たぶん、ありません。(笑)
むしろ、違う趣味・嗜好を持つ、普段の生活ではおそらく出会うことも、交流することもない人たちが、近い場所でお互いの気配を感じながら楽しめたことがよかったのだと思います。「あの人たちは何やってるんだろう?」といった気持ちの中から、「あれもおもしろいかも」と興味が広がり、比治山公園での楽しみ方が広がる。そんな波紋のような広がりが繰り返されていけば、きっともっとおもしろくなる。そんな予感を感じられた1日となりました。

企画概要
タイトル:PARK SESSION DAY〜小さな発見を夜長月の比治山公園で〜
主催: 広島市(政策企画課)・SATOMACHI(市の業務受託者㈱和大地の運営チーム)
事務局: 株式会社和大地

日程:2020年9月19日土曜日

内容:ランSESSION/いきものSESSION/動画SESSION

 

 

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