その日は、曇り空でもときおり晴れ間がのぞく、柴刈り日和。そうです、「芝」刈りではなく、「柴」刈りです。全部は無理でも、自分たちでできることはやっていこうと比治山の整備に取組んだ、広島市とSATOMACHI(運営会社:和大地)が主催した「ととのえる比治山vol.2~みんなで柴刈りに~」。
片手にノコギリを持って、自然に生えている背の低い木やうっそうとしていた笹を切り、子どもも大人もみんな一緒になって、山をきれいにしました。もちろん、切ってよい木や場所は事前に関係各所に確認し、適切な指導の下に進めました。
昔話のように、柴刈りをしていると光る竹が見つかって、とはいかなかったもの、参加者それぞれ素敵な発見をしたみたいですよ。
大きなクスの木の下で
比治山を電停の駅の方から上がって行き、広島現代美術館と放射能影響研究所へとの別れ道の手前にそびえたつ、大きな被爆樹木のクスノキ。このクスノキを入り口とした、ちょうど比治山トンネル上にあり、ちょっとした広場になっているスペース。今回は、大きな大きなクスノキに見守られながら、ここの柴をみんなで刈りました。
まずはオリエンテーションから。前回の「ととのえる比治山vol.1~リーダー養成講座~」から引き続き、NPO法人ひろしま人と樹の会の櫻井さんたちを迎え、指導していただきました。前回のように、チェーンソーなどの機械を使わないものの、危険が身近にある山での作業、刃物であるノコギリを使用するので、使い方や心構えについて、しっかりとしたレクチャーが必要です。
櫻井さんは、ヘルメットなど防具の準備の説明をしながら参加者のみなさんに対して、この日の目標を伝えました。
「参加者のみなさんには技能を身につけて帰ってもらいたい。そして、リーダーの方にはメンバーに達成感を味わってもらえるような指導を目標に活動してほしいです。」
まずは練習から。ノコギリに慣れる!
柴刈りに使うノコギリも、甘く見てはいけません。使い方を間違えれば、自分自身はもちろん、周りにいる人をケガさせることにもなりかねません。まずは扱い方の練習。各自、手ノコケースを腰に装着し、直径5cm-10cmほどの木をグループに分かれ1本ずつノコギリで切って倒します。
倒したい方向を決めたら刃を入れる場所や向きを決め、水平にノコギリを入れて切っていきます。引いて切る、引いて切る…ひたすら繰り返し、ノコギリの扱い方を体に沁み込ませます。
何回も何回も切って、上手な切り方がわかってきたところで、いよいよ本番へ。
カーブになっている道路脇に密集している笹をどんどん切っていきます。15分くらい経ち、ひとしきり切ったら、みんな一斉に伐倒を一休み。無理して作業を続けるのはケガの元。時間をちゃんと考えながら、作業をしました。
今度は切った木や笹を集めて寄せ、束ねておきます。そう、実は、切る作業よりも、切り終わった後のこうした束ねる作業が、とても大変で、とても重要なのです。
束ね終わったら伐倒再開し、ノコを走らせる。子どもたちも「がんばれ」「もうちょっと切ろう」と周りの大人たちに励まされながら大奮闘です。
大きく開けて、森に光が入る喜び
薄暗い柴でうっそうとしていた風景に少しずつ光がさし、柔らかく光の差しこむ場所に。大幅に明るく視界の開けた場所ができました。
こんな瞬間に立ち会えることはそうそうありません。それも、自分たちの手で生まれ変わらせる体験となるとなおさらです。子どもも大人も、その変化にびっくりでした。
また、作業の手をいったん止め、一休み。知らない同士でも、同じ作業をがんばった連帯感のおかげで、自然と和やかに会話も広がっていきました。
後発隊の到着。柴刈り・第2ラウンドのはじまり!
しばらくすると、後から参加の子どもたちの団体が到着。子ども用ヘルメットを各々のサイズに調整し、「マイ手ノコ」を腰に装着し、いざノコギリの練習へ。
台に乗って遊んだり、ノコをケースに納めずに動きまわっていたりすると、「危ない!!!」と容赦なく周りの大人たちから厳しい注意の声が飛びました。
普段触れないノコギリに触れて嬉しい子どもたちに、楽しさだけでなく、その危険性をしっかりと真剣に伝えます。
ひとしきり練習を終えた子どもたちもいよいよ本番。直径3-10cmほどの細い木がたくさん生えている繁みで、一人ずつ木を切っていきます。まず手の高さで切ったあと、根元のあたりで切って仕上げます。2段階に分けるのも、作業をしやすくし、ケガをするリスクを小さくするための工夫。そして、切った木を30-50cm程度の長さに短く切りそろえて、束ねて、運ぶ。力作業が続きます。
そうした中でも、子どもたちの集中力は、大人顔負けのすごいもの。子どもたちの力に大人が驚かされていました。
柴刈りをしていると、「なかなか切れない~」という子もいれば、手際よく速く切っていく子も。切った木を「見て!」とうれしそうにアピールする子どもたちの表情に、櫻井さんの言われていた「それぞれが成功体験を得る」とはこういうことかと指導者の心得を思い出しました。
締めくくりには、直径15cmほどの古い木を伐倒しました。枯れた木が元気な木に寄りかかって、危険な状態だったのです。広場のほうに向かって倒すことに決め、全員が安全な場所に避難したことを確認してチェーンソーを入れていきます。子どもたちも真剣な表情でチェーンソー作業を見守ります。
さいごは、みんなでお片付け
切った枝を集めたり、切った木や笹をさらに短くそろえたりして撤収しやすいように整えました。子どもたちも積極的に運んだり切ったりと大活躍。
作業中に通りがかる近所の方も、その見慣れた景色の変わりように、「ひらけたなあ」「ようなったなあ」と言葉を交わして歩いていく姿が印象的でした。
そして最後に、グループごとに反省会。子どもたちからは、
- 木を切る経験ができて良かった
- いっぱい切れて楽しかった
- はじめ腕が痛かったけど、すぐに教えてもらって、楽に切れるようになった
と、楽しそうと話してくれました。「次はもっとたくさん切る!」と、さっそく目標を立ててくれる頼もしい子も。
各グループの指導者の方からは、
- 今後いろんなところで木を切ることがあるかもしれない。頑張って!
- また切る機会があれば、まっすぐに切るようにして、けがをしないようにしよう。
と参加者の方に声をかけていました。また、参加者全体に対して、
- 田丸さんからは、「みんなの成長が見えてよかった。大人数で取り掛かり、しっかり刈ることができて驚いた。またやりましょう!」
- 中村さんからは、「見てわかるような成果が得られてよかった。今後もやりたい!」
と大きな満足感がにじむ一言が。そして今回も準備から指導から手掛けてくださった櫻井さんからのお話がありました。
「事故をしないという目標を達成できてよかった。ありがとう。技能の向上の面でも、積極的にやってもらえてよかった。次からこの道を通るときは『自分たちでやった』という誇りをもってください」
最後は、ケガがなくてよかったと感謝する意味で、櫻井さんの音頭で「どんぐり祈願祭」を行った。その場の全員で「どんぐり」「ころころ」のコール&レスポンスを3回行い、明るい広場は笑顔に包まれました。
ととのえる比治山 vol.002 企画概要
主 催:広島市(政策企画課)・SATOMACHI(和大地の運営チーム)
事務局:株式会社和大地
協 力:学校法人穴吹学園 穴吹デザイン専門学校、イオンモール株式会社広島段原ショッピングセンター、段原おやじの会、段原地区町づくり協議会、庭能花園、株式会社ノラクリエイト、広島市現代美術館、広島市まんが図書館、NPO法人ひろしまジン大学、NPO法人ひろしま人と樹の会、公益財団法人放射線影響研究所、ボランティア以心伝心、モチプロ・サポーターズ(五十音順)
日 程:2019年3月2日土曜日
時 間:受付開始 8:45- / 講座開始 9:00- 終了予定時刻 12:30
会 場:比治山公園内の比治山トンネル上のスペース
集合場所:比治山公園内の比治山トンネル上のスペース
参加費:無料
案 内:http://satomachi.jp/blog/2019/02/06/totonoeru-hijiyama002/
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