2002年信州大学大学院を卒業。2002年~2006年マルコメ株式会社にて、醸造技術開発、インスタント食品の商品開発を行う。2006年~現在 実家の稼業である、特注家具メーカーを経営。2014年~現在 夫婦で石見麦酒を立ち上げる。クラフトビールの製造はもちろんのこと、実家の稼業と結び付けて、全国の小規模ビール工場の設計・施工を行っている。(現在全国で20カ所の実績)
“えっ、選んでいいんですかぁ” “うわぁ、迷うなぁ”
ファーストドリンクとして、7種のうち1本を選ぶように勧められると、参加者はもれなく笑顔に。迷った末に気になる1本を手にすると、各々、6~7脚ずつイスがセットされた各テーブルへと散らばってゆきます。ほとんどが1人ないしは2人程度での来場でしたが、各テーブルでは、名刺交換したり、お互いが選んだビールをテイスティングカップに注いで味見しあったり、イベント開始前からなごやかムード。受付ではカルビー様ご提供の「ふるシャカ」が配られていたため、しだいに会場あちこちからシャカシャカという音が響きはじめ、つまみ&ビールで早くも飲み会状態となっていました。
19時半。いよいよイベントスタートです。
ビールは自由なお酒です
「当初、石見麦酒で生産されていたのは、発泡酒でした。発泡酒って、ビールと何が違うのかご存知ですか?」
主原料とアルコール度数などは、同じです。違うのは、麦芽含有率や副原料についての制限、醸造量の最下限など。でも、2018年4月からは法律が変わり、副原料が含まれていてもビールとして認められるようになって、さまざまなフレーバーのビールが誕生するようになったそうです。それを受けて、「関わる人の名前をできるだけ多くラベルに記そう」と地元素材で発泡酒を製造してきた石見麦酒も、この春からはビール会社となりました。
「ビールは自由なお酒なんです」
石見麦酒の6種のビールについても、使われている副原料や誕生秘話などの解説を聞き、改めて色や香りの違いも確かめながら飲み比べて、参加者の皆さんは想像を超えるビールの奥深さに感慨を深めているようでした。
グループワークショップ「お題“比治山のクラフトビールをつくろう” 」
ところで、そもそも「クラフトビール」って何でしたっけ???知っているようで、意外と知らなかった(考えたこと、なかった)かも………。今さら訊くにも訊けず、もやっとしていましたが、山口さんのレクチャーでスッキリしました。
1994年の酒税法改正により巻き起こった「地ビール」ブーム。観光地を中心に、全国でローカルブランドが乱立しましたが、しだいに大規模メーカーが幅をきかせるようになり、淘汰されていきました。2004年頃から設備投資を抑えた品質重視の小規模醸造が再び増え始めてきたとき、かつてのブームと衰退で広がった「地ビール」のマイナスイメージを払拭すべく「クラフトビール」という新しい呼び名が生まれたのだそうです。
つまりは、その土地ならではの個性がきわだったビールがクラフトビール。「比治山ならではの、比治山らしいビールを作ろう!」というのがワークショップのねらいです。
比治山のいまの情報を抽出
長く地元で暮らす段原地区まちづくり協議会会長の梅田憲夫さん、段原地区連合町内会会長の秋田正洋さんからは「見通しのよい山で、このへん(立町あたり)から比治山を見ると桜の時期は山がピンク色に見えるほどだったが、今は雑木林が茂って、囲まれた桜が枯れてしまっている」と古きよき時代を懐かしむお話を紹介していただきました。
比治山を守り育てる会の方からは「30代の若い力で山を整備し、比治山を後世に残せないか」とのアツい意欲が語られました。
また、学生時代から子育て中の現在まで比治山を頻繁に訪れ、イベント開催などもしているモチプロ・サポーターズの尾崎マコトさんは「比治山ビールができたら、大人が来て、家族連れも来て、比治山を巡ってもらえるのでは」と期待感満載のコメント。
段原ショッピングセンターを運営するイオンモールの麻西涼さんは「地域が活性化すれば相乗効果で良いショッピングセンターになっていけると思う。10年後、(ショッピングセンターとその周辺が)にぎやかな場所になっていたら嬉しい」と共栄への希望をアピール。比治山ビール創作にも興味津々といった様子でした。
お酒も入った柔らかいアタマでワークショップ
段原グルメマップを広げたり、身を乗り出したり立ち上がったり、身振り手振りをまじえて自分の意見を披露したり…とにかくどのグループも、熱量がハンパない。皆さん、アツすぎます。とても数十分前に会ったばかりの人たちとは思えません。活発に意見交換する声に混じって時には笑い声も聞こえ、真剣な表情でウンウンと頷く姿も見えていました。
プレゼンはガチバトル!
大盛り上がりの中、あっという間に時間は過ぎて、いよいよクライマックスです。「山口賞」をかけたプレゼンタイム!
「近い未来へ生まれ変わる」をコンセプトに、ホップの香りを活かした深い森のような香りの、琥珀色で、爽やかな味のビールを提案されました。山口さんの講評に会場は「おぉ~っ」というどよめきと笑いが起こりました。
山口さん講評:未来をイメージするというのは良い。(石見麦酒でも)使いたい。
山口さん講評:ここでしか買えないというのは、すごくいい。石見麦酒のビールも江津でしか買えないため、わざわざ買いに訪れる人がいたり、地元の人が手土産にしてくれたりすることで活性化につながっているんです。
かつては美術館の下あたりから市内を見渡せ、キレイな夕陽も見られたのに、数十年でヤブツバキや竹が茂ってしまった比治山。昔の姿を取り戻すために考えられたのが、タケノコや不要な植物を切って持ってきたらビールと交換できて、その植物を他の誰かが活かせるようにする持続可能な仕組を作ろうという、画期的なアイディアです。作りたいのは、竹の色、竹の香りのビールとのこと。「ビールを飲みたい!という力だけで問題解決につながる」という夢のプランを、アツくアピールされていました。
山口さん講評:環境も良くなるし、いいアイディア。竹のカップで飲めたら、なおいいですね。
山口さん講評:塩を入れたビールもいい。緑とピンクというのもできなくはないし、桜は香りもいいし酵母も取れるので、そういうのも使ってもいいのかな。
山口さん講評:実は石見麦酒の「セゾン」も季節を意味する名前なんです。ベルギーの農耕をする人々は農閑期にビールを仕込んで忙しいときに喉を潤すそう。ビールは季節を感じられる飲み物なんです。
白島で作られている日本酒・蓬莱鶴も最近まで比治山の水を使っていたほど水が良いことから、美味しいビールができて人がたくさん呼べるはずだと期待を込めたプレゼンでした。最後は「蛇口をひねったらビールが出るようになったら、ぜったい行く!」という、ぜひ実現してほしい夢の企画も飛び出して、会場内には笑いがあふれました。
山口さん講評:石見麦酒の「セゾン744」も、益田市にある山の標高を表しているんですよ。前のグループに続いて、参加者のネーミングセンスがプロ並みでビックリです。
山口さん講評:商品名が謎めいているのがいい。何?と訊かれて説明することで地域のPRができる、いい名前です。
再び光る、ネーミングセンス。参加者の皆さん、ただのビール好きではないポテンシャルの高さを存分に発揮されていますね…。どのグループも熱のこもった本気のプレゼンで、本当に商品化も目前のように錯覚してしまいそうでした(笑)。
その中で、栄えある「山口賞」に輝いたのは・・・
・・・・・・ドゥルルルルルル(ドラムロール)・・・・・・・
「お金に代えられないもので、自然も回復していく。森に手を入れることで昔の風景を取り戻せる、こういうしかけができたら素晴らしい。ストーリーを評価したい」と審査結果が発表されたあと、受賞者には石見麦酒のビールを使った、「いのしし肉の黒ビール煮込み」缶詰が山口さんから手渡されました。
クラフトビール/比治山への想いを胸にワイワイ懇親会
あえるSATOMACHI vol.3 企画概要
日 程:2018年8月7日火曜日
時 間:open19:00- / start19:30-
会 場:キリン広島事務所
住 所:広島県広島市中区八丁堀16-11 スタートラム広島12F
主 催:SATOMACHI
協 力:株式会社石見麦酒 キリンビール株式会社広島支店
案 内:https://satomachi.jp/blog/2018/07/24/aeru003/
文/北野 真弓
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