話し合える安心感が、日常の楽しみを広げる後押しに。

身近にある自然の中で、自由に楽しむことを、特別なことではなく、日常に。そうした思いを持って始まった、比治山公園をフィールドに多様なプログラムを体験し楽しめる月1回のPark Session Day。秋と冬のちょうど境目といった空気の中、11月のPark Session Dayは、かけっこ、クラフト、アート、たき火の4種類のSession(セッション)が開催されました。まずは動画レポートで雰囲気をお楽しみください。

かけっこSession #かけっこスクール

朝日が差し込む広場で、前回に続き「がんばらない」かけっこを教えてくれるDirectorの宮本コーチと一緒に、かけっこやかけっこに大事な体の動かし方を教わりながら、広場や山の斜面を走ってみました。少人数で、「子どもたち一人ひとりの反応や体の状態を見ながら、体の動かし方を伝えられた」と宮本コーチも満足そうでした。

準備体操から楽しく

生き物の動きを取り入れたストレッチから始まりました。だんごむしのように小さくまるまっていたと思ったら、そこから植物の芽になってニョキニョキと伸び。そうかと思うと、いろんな恐竜になって、体をほぐしました。2足歩行、4足歩行、飛ぶ恐竜。動きがおもしろく、やっていると自然と愉快になってきました。

「がんばらない」と「がんばる」を体感

そのあとは、「がんばらない」かけっこに大切な、力を抜いた腕の振り方を試しました。ジャンプと組み合わせて、腕を振る方向の大切さを体感。その後は、山の坂道の上り下りを「がんばりました」。こちらは、体幹を意識して全身を使う感覚を養う練習。最後はおさらいする意味でダッシュ。これで終わる予定でしたが、参加した子どもたちのリクエストが強く、山に入って探検をしてから終了となりました。

苦手な気持ちが少しずつ前向きに

最初は、運動が苦手だなと感じていた子や、広場での腕振りやジャンプにあまり興味が向かわなかった様子の子も、徐々に気持ちに変化が出てきたようです。宮本コーチによれば、「参加者の中に場をリードしてくれる子がいて、その子がムードメーカーになって、みんなが少しずつ前向きな雰囲気になった」とのこと。そして、「山に入ったことで、子どもたちの気持ちにスイッチが入った」とも。

宮本さんから「大切なのは、体を動かすことを強要せずに、主体的な参加を促すことだったのかなと思います。そうすることで、参加していた子どもたち同士が良い雰囲気をつくり、最後は山が気持ちを後押ししてくれるなど、自然と気持ちが前を向いていったように思います」と振返りを教えてくれました。

クラフトSession #花炭

「これって、何?」と思われる、上の写真。これだけ見ると、ウニかと思いますよね(自分の場合はそうでした。笑)。昨年のあっ”たまる”比治山でも披露していただいた花炭(はなずみ)。簡単に言うと、木の実、葉、花、果物など素材そのままの形の「炭」づくりです。木で作るより比較的簡単に炭を作ることができ、本当に自然のそのままの形です。
こちらのDirectorは、昨年のあっ”たまる”比治山に引き続き、自然が大好きでたまらない広島環境サポーターネットワークのみなさんでした。

落ち葉や木の実が炭になる!

BBQの時に使う炭は、素材は木で、炭小屋で何日もこもってできあがる。そのくらいの知識しかない自分にとって、広島環境サポーターネットワークのみなさんに「木の実、葉、花、果物などが素材そのままの形で炭になる」と教えてもらえても、最初はチンプンカンプン。それでも、つくり方を教えてもらいながら、いろんな素材をカンカン(お菓子缶)に詰めていきます。

そんなに燃やして大丈夫?

空気が入らないように缶のふたをしっかり閉め、あとはガンガン火にかけます。「えっ?そんなにすると、燃え尽きて灰になって残らないのでは?」と心配になるくらい、火にかけます。しばらくすると白い煙が出てきて、その後、紫色→透明と変わるので、火から降ろし冷まします。

時間を閉じ込めた、黒の世界

お待ちかねの缶オープン。パカっと開けると、「おおっ」と参加者から驚きと歓声が。自分で入れた木の実や松ぼっくり、葉っぱがそのままの形で黒くなっています。モノクロ写真の世界がそこに広がっているように、そこだけ時間が止まっているような、でもとても綺麗で、とても不思議な瞬間が生まれます。古くから茶の湯の世界で、優雅で高尚なものとして珍重されてきたというのも、わかる気がしました。

不思議が広がる

「炭って、こんなに簡単にできるの」「いろんなものが炭にできるんだね」と驚く参加者のみなさん。そんな花炭づくりを見ていた他Sessionの参加者が、「自分もやりたい」「とってきたどんぐりを炭にしたい」と続々と参加。花炭をつくりながら、みんなが「よく考えると、炭って何?」「なんでこんな美しくなるんだろうね?」と、不思議でうれしい気持ちをたくさん抱えながら、「持って帰って家の人に見せよう」と言い、どこか得意気に帰っていく様子が印象的でした。

アートSession #野外美術舎

こちらは、初のアートSession。自然豊かで、美術館もある比治山で、季節も秋でぴったり。そんな満を持して開催されたアートSessionのDirectorは、この比治山で創作活動をしているアーティストの石原悠一さんでした。

知っていること、気づくこと

参加した子どもたちに「りんごの色は何色?」の質問から始まり、種類の異なるりんご(今回はとき、サンふじ)や、みかんと柚子を見ながらお話がありました。
最初は、子どもたちが答えたりんごの色は「赤色」でした。でも、「本当に赤色?消防車の赤色と同じ?」と問いかけてみます。それは、知識としての色と実物にはズレがあることを感じてもらうためだそうです。実際に、とき(りんごの種類)を見た子どもは、「梨!」と言ったり、「青りんご!」と言ったり。そして子どもたちに色を聞くと「黄色!」と答えていました。呼び方は青りんごだと思っていたのに、実物を見ると黄色や緑色に見えたのです。また、みかんと柚子のときには、形が似ているけれど、みんながすぐに見分けられました。「私たちは普段から気づかないうちに、色や形、質感を感じ取っていることに気づくことができました。」とその成果を教えてくれました。

アンテナの感度を上げよう

続いて、みんなで目を閉じて、まわりの音に耳をすませました。焚き火の音や話し声、鳥の鳴き声や木々の音などがしっかり聞こえてきます。音を聞くだけでも、何の音か、近くか遠くかなどが分かることに気づきことができました。さらに、土の温度、落ち葉の匂いなど、集中するとたくさん感じられることをひとり一人が体感しました。

たくさん感じて好きなものを描こう

「今回は感じることを中心に進めたかった」という石原さんのこだわりで、濃さの異なる三種類の鉛筆のみを使いました。子どもたちは、各々好きなものを見つけて鉛筆を使い分けて描きました。描き終えた後は、感じたことをお互いに伝え合ってもらおうと、子どもたちが一人ずつ「どんな気持ちで描いたのか、どんなことを描きたかったのか」を発表し合いました。
「木の皮が固くて触ると取れるところを描いた」 「この黒くて大きいドングリは親分で、これが子分で、、、、」 など、いろいろな話がありました。
まだはっきり言葉を話せない子も、指さしながら声を出して気持ち伝えてくれました。

「今回は、感じながら描くことに重点を置いて進めました。鉛筆の濃淡だけにすることにより、対象物の特徴を捉えつつ、想像力をふくらませて描けるようにしました。先入観で形を描いたり、色をつけたりした『それっぽい絵』ではなく、感じたものをしっかり描いてくれたように思います。」と石原さんも手応えを感じられたようでした。

たき火Session #アポリト広島 #中村林業

寒くなればなるほど、たき火が恋しくなりますね。今のたき火の人気を象徴するように、参加者のみなさんのたき火への関心の高さが実感できました。今回のDirectorは、木のスペシャリストとして、北広島町で毎日山で木と向き合う林業家の中村さん、そしてたき火のスペシャリストとして「ソト遊び」専門店のAPORIT(アポリト)広島店の副店長の鈴木さんをお迎えしました。

身近にある、木に注目

一口に「木」と言っても、比治山公園にも種類はたくさんあって、その違いを普段は明確に意識はしていないかもしれません。最初に、中村さんから、そういった身近にある木のことを、たき火に向いているかどうかなども交えて、紹介してもらいました。

火を使わない着火にチャレンジ

火をつける準備ができたら、いよいよ着火。簡単に着火できる着火剤の紹介もありましたが、今回は少し難易度の高い麻紐(あさひも)とファイヤースターターを使った着火に挑戦しました。麻紐をほぐして綿状にしておいて、スターターを削った粉を振りかけておいて、そこから一気に綿に向かって強くこすって、シュッ。火花は出るけど、なかなか着かない火。子どもたちには、このなかなかうまくいかない感じが好評で、なんどもなんどもシュッ、シュッと夢中になっていました。

子どもも大人も、はまる薪割り

今回は着火だけでなく、斧やナイフや鉈(なた)といった、刃物の使い方も体験しました。最初に、中村さんによる薪割りのデモンストレーションがあった後、個別に指導を受けながら、それぞれの道具の使い方を身をもって覚えていきます。見るとやるとでは大違い。パカッと割れると、やっている人も、見ている人も気持ちよく、思わず「おおっ」と小さく歓声を上げてしまいました。

みんなが楽しめるように、マナーを学ぶ

最後は、たき火台の使い方や、火の後始末の仕方についてです。前回も「来た時よりもキレイに」といった話がありましたが、地面の上での直火によるたき火はしない(必ずたき火台などを使う)などマナーを守って楽しむことが、結局長く、無理せず、多くの人が楽しめることにつながることを学びました。

中村さんが、「今回、本当に町で家族と外で遊びたい人が多いと感じました」と言うように、外でたき火を楽しみたいという人が増えています。
「たき火を通じて、木のことや山のことをもっと知ってもらえれば、山の枝葉も減り、山の地面にも空気が入り、山で遊ぶ楽しさも広がります。でも、間違った楽しみ方をすると、誰かの迷惑になり、『たき火禁止』といったことにもなりかねません。」と、中村さん。
こうしたたき火のマナーや楽しみ方をいろいろな人に伝えていきたいと、中村さんも鈴木さんも口を揃えて言われていました。

一歩踏み出す後押しに。相談できる人がいる安心感。

Sessionが終わった後、Directorの方と保護者の方が話し合う姿を、よく目にします。保護者の方が気になっていた色々なことを質問し、それに対して真摯に答えたり、アドバイスを送っていたりします。お子さんの運動のことや、たき火のこと。その質問は様々ですが、なんとなく「これでいいのかな」というモヤモヤした気持ちが共通している気がします。

そんな時、その分野のエキスパートの方は、専門的なことを含めてなんでも相談ができ、とても頼もしい存在なんだなと気づきます。プログラムを通じて、「なるほど、こうすればいいんだ」「なんだ、これでいいのか」といった手応えをつかみ、気になることはしっかりと解消して、次は自分自身が安心して楽しめる。そんな参加者のステップにDirectorのみなさんは伴走してくれているのかもしれません。

企画概要
タイトル:PARK SESSION DAY 2020.11
主催: 広島市(政策企画課)・SATOMACHI(市の業務受託者㈱和大地の運営チーム)
事務局: 株式会社和大地

日程:2020年11月31日土曜日

かけっこSession
≪Director≫ 宮本和夫コーチ
クラフトSession-花炭-
≪Director≫ 広島環境サポーターネットワークのみなさん
アートSession
≪Director≫ 石原悠一さん
たき火SESSION
≪Director≫ 鈴木貴史さん(右)、中村修也さん(中央)

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