SATOMACHI/さとまち

街中の自然を味わう仕掛けで、未来を創る。

自然につつまれながら、余韻を楽しむ。

身近にある自然の中で、自由に楽しむことを、特別なことではなく、日常に。そうした思いを持って始まった、比治山公園をフィールドに多様なプログラムを体験し楽しめる月1回のPark Session Day。秋晴れの空の下、10月のPark Session Dayは、ヨガ、動画、かけっこ、たき火の4種類のSession(セッション)が開催されました。

森に抱かれ、ヨガSession

「普段からこんなに音にあふれているんだー」
木に囲まれた静かな空間が広がる朝の比治山公園。目をつむり、耳を澄ますと気づきます。小鳥のさえずりや、風が木々を揺らす音などの心地よい音から、カラスの鳴き声、車の通る音。自然の中で自然を味わいながら、ヨガをして過ごしました。

邪念を受け止めて外に流す

ヨガSessionのdirectorは、MOMOE(ももえ)さん。今回は、陰陽ヨガという、一つのポーズを長くとって経絡(気の通り道)に働きかけるスタイルでした。座り方から始まり、呼吸の仕方を学んでからポーズを取ります。長いポーズを取っていると、むくむくと頭の中で邪念が起こってきます。そうした情報や思いついたことをいったん受け止めて外に流すイメージを持ちましょうと、MOMOEさんからアドバイスがありました。

1時間のSessionが終わると、さすがに手足が冷えたようで、終わった後はみんなでたき火を囲み、あったかいお茶を飲んで、体を温めました。パークヨガが初めてという方もいらっしゃって、パークヨガって気持ち良いですねと感想をいただきました。

がんばらずに速くなる、かけっこSession

かけっこSessionのdirectorは、日本陸上競技連盟(JAAF)公認ジュニアコーチでもある自称「コーチ」の宮本和夫(みやもとかずお)さん。そんな固い肩書からは程遠い、参加した子どもたちには、一人ひとりに名前で呼んで声をかける、一人ひとりの違いをしっかり見極めながらその子に合ったアドバイスを伝えるなど、とても寄り添ってくれます。子どもたちには、決して「ダメ」と言わず、「失敗してもいいからやってみよう」とチャレンジを優しく応援してくれました。

宮本コーチが、かけっこスクールで大切にしているのが五感です。見る、聞く、触る、嗅ぐ、味わう。自然の中で五感を使いながら、自然と体を調和させ、体を動かし楽しむことを心がけています。
ただ、漠然と楽しいことをしているのではなく、子どもたちの成長段階に合った理にかなったプログラムで、大人向けの説明も入れながら、そこにいるみんなが安心して楽しめる環境をつくってくれました。

生き物の真似をして、がんばらず、無理をせず。

宮本コーチのかけっこの特徴は、「がんばらない」。体中に余計な力が入っていると、かえって走るのが遅くなってしまうのだそうです。だから肩の力を抜き、腕の力を抜き、クラゲのように走るのがコツ。そういえば、宮本コーチの話の中には、生き物がたくさん出てきます(笑)。

最初のストレッチはダンゴムシ。ダンゴムシのように、背中をまーるくします。
その次は、にわとり。にわとりが歩くように、ひざの力を抜いて「カクン、カクン」、慣れてきたらそれを速めて「コンコンコンコン」とリズムよく足を動かします。
腕の使い方を覚えるためには、鳥がはばたく姿のマネ。体を前に倒して「バサッ、バサッ」と、肩の後ろの肩甲骨を使って腕を動かします。体をリラックスさせ、力が抜けると、自然と肩が動くようになっていきました。

今度は足について。「走る」というのは、片足立ちを繰り返している状態なので、片足立ちがきれいにできるといいのだそうです。下腹部に力を入れて、片足立ちになり、浮いている足を体の前・横・後ろに出しながら、バランスをとります。
うまくできない場合は、誰かにつかまりながら、あくまで「無理せず」進めます。

唯一、スタートの時だけは「最初の3歩だけがんばる」らしいのですが、そのあとはクラゲのように。その姿は、一生懸命走っているというよりは、「スーーッと」滑るように体が前に進む感じです。でも、それが不思議と速く、参加した子どもたちも最初と走りが違ってきて、放っておくとそのままずっーと走っていきそうな、力みのない走りになっていました。

最後は、チーム対抗のおにごっこ。新聞紙で作った2本のしっぽを、相手チームの人に取られたら負け。やはり自然と盛り上がります。子どもの中には体格差があってしんどいかなと宮本コーチは心配したようでしたが、大人も交じって3分間。みんなでまさに所狭しと走り回りました。この日一番の歓声と充実した笑顔が、その楽しさを物語っていたのは言うまでもありません。

大人のたしなみ、動画Session

動画Sessionのdirectorは、先月に引き続き地元・段原在住の映像クリエイターの織田泰正(おだやすまさ)さん。今回は、場所を変えず、たき火にあたりながら、周りで実施されている様々なSessionの様子を撮影しながら、動画の撮影手法や上手に撮るためのルールなどを学んでいきました。

夫婦で楽しむ、大人の休日。

参加者は、ご夫婦での参加。休日に、仲睦まじく夫婦一緒におもしろいを見つけに来ている感じがして、こういった大人の休日の楽しみ方もいいなと思いました。

Sessionでは、織田さんがスマホで撮影した動画をモニター画面で共有しながら、アプリの機能なども解説。さらに、今回は予定していなかった編集についても。実際に音楽なども入れてその場で動画を完成させ、撮影も編集もできるアプリの便利さを実感してもらいました。
参加したお二人が口を揃えて言われたのが、「スマホでここまでできるんですね」の驚きの一言でした。

気づけば笑顔、たき火Session

寒くなり、ますますやりたくなってくるのが、たき火ではないでしょうか。そのたき火の楽しみ方について教えてくれたのが、広島市の中心街の一角で、SAVAGE(サバージュ)というアウトドアショップをしているdirectorの斉藤諒(さいとうりょう)さんです。
たき火の始め方~楽しみ方~片付け方を、道具の使い方や大切な心構えなどとセットで教えてもらいました。

メタルマッチで、火をつける

まず火をつけるときには、木の組み方が大事です。何事も準備が大事なんですね。
着火剤となる麻ひもをほどいて綿状にしたものをたき火台の中央に置き、その周りに燃え移りやすい枯れ葉、割りばしや細い枝、少し太い薪といった順で、空気の通り道を意識しながら隙間を開けて組んでいきます。この時の薪は、油分が多く燃え付きやすい針葉樹を使うのだそうです。

着火は、ライターでもマッチでもなく、今回はメタルマッチを使います。マグネシウムでできた棒状のもので、ストライカーと呼ばれる金属の板で強く擦ることで、火花を起こし着火させます。
少しコツが必要で、まず、着火させたい麻ひもを押さえながら、メタルマッチをゆっくりと擦り、マグネシウムの粉を振りかけておきます。そして、一気に「シュッ」と強く擦ると、「ボッ」と麻に火が付き、思わず「オオーッ」と言ってしまいます。
とはいえ、なかなかつかず、何度も何度も擦って、火を付けました。

火に慣れ、火を楽しむ

火がついた後は、燃え移っているかを確認しながら、あまり触らないのがポイントなのだそうです。空気の通り道は意識しながらも、様子を見守り、薪に燃え移っていくのを待ちます。
中には、「火が怖い」とお母さんの後ろに隠れていた子もいましたが、時間とともに慣れていったようでした。

針葉樹の薪に火が付き安定してきたら、今度は広葉樹の薪の出番。こちらは固くてしっかり詰まっているので、火が長持ちするんだそうです。参加していた男の子は、たき火の中に自分で薪を置いてみて、「こんなもんかな」とご満悦の様子。

斉藤さんによれば、一般的にはたき火はボーボー燃やすというよりは、自分好みの火加減にして楽しむもので、火力が落ちた時に使う火吹き棒は必須アイテムなのだとか。

火加減が安定してきたら、お楽しみのマシュマロタイム。「イェーイ」の歓声を上げながら、あぶって、食べて、おいしいの笑顔。顔中をマシュマロにしながら、みんなを笑顔にしてくれた子もいました。

たき火をみんなが楽しむために

火の始末をして、ちゃんと片付けるまでがたき火です。
斉藤さんがキャンプの時に心がけているのは、「ここでキャンプをした、という形跡を残さないこと」なのだそうです。次にここに来た人も気持ちよくキャンプができるようにと、片付けをおろそかにすることはありません。
たき火台の火が見えなくなるまで、炭を小さく崩していきます。そして、おかきなど入っている缶箱に、炭を入れ、ふたをし、酸素を遮断します。こうして冷ましていくと、もし水が無くても、安全に処理できるのだそうです。

たき火はやり方を間違うと、自然を汚したり、やけどをして自分を傷つけたり、外の人の迷惑になり、せっかくの楽しみを狭めてしまうことにもなるので、技術だけでなく、マナーや心構えも大切だと実感しました。

そこで、斉藤さんからのお話も含めて、たき火をする上で気をつけることを10個にまとめてみましたので、ご覧ください。

1.たき火をする場所を選びましょう。
ー周りに可燃物がないか、周囲に迷惑がかからないかを注意しましょう。
2.ルールを守りましょう。
ー各公園やキャンプ場にルールが設けられているので、その指示に従いましょう。たき火シートを下に敷くとさらに良いです。
3.子どもだけでたき火はやめましょう。たき火から目を離さないでください。
4.強風の日はたき火はやめましょう。
5.服装はコットンかウールにしましょう。
ーコットンやルールの耐火性のあるものを。ポリエステルは穴があくので要注意。
6.薪の燃焼には酸素が必要。空気の通り道を意識して重ね過ぎないようにしましょう。
7.薪を一気に燃やしすぎないようにしましょう。
ー好みの火の大きさに維持することを心がける。
8.残り火を完全に消化する。
-焦りは禁物です。
9.たき火をした痕跡は残さないようにしましょう
-きれいに片づけて、ゴミは持ち帰りましょう。
10.周囲への心配りを最大限にしましょう。

心地よさは、余韻の中に

各Sessionが終わった後、日なたや、たき火を囲み、過ごす時間。そこには、Session中に聞けなかったことや思ったことをDirectorのみなさんに気軽に相談している姿がありました。

例えばかけっこSessionの宮本コーチには、
「うちの子は運動や走るのも好きだけど、動きが硬いのが気になっていた。今回参加してそれが解消できてよかった」
「かけっこの時は、やっぱり紐靴がいいんですかね」
「小学校高学年くらいまでは、バランス感覚を磨く時期なので、長い距離を走るよりも、楽しく駆け上がれる程度の山登りがいいと思いますよ」
といったやりとりが交わされていました。

終わった後も、子どもたちは友達と走りまわり、親御さんたちはおしゃべりを楽しんでいました。他のSessionの参加者もそういった様子を眺めながら、あったかいお茶を飲み、ほっこり。思い思いに過ごしながら、自然に囲まれた一つの空間になんとなく安心していられる感覚がとても心地よかったです。
こんな余韻がいいなーとみんなが思えた1日でした。

企画概要
主催: 広島市(政策企画課)・SATOMACHI(市の業務受託者㈱和大地の運営チーム)
事務局: 株式会社和大地

日程:2020年10月31日土曜日

ヨガSESSION

かけっこSESSION

動画SESSION

たき火SESSION

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